あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

O Bêbado e a Equilibrista (酔っ払いと綱渡り芸人)

  • 作曲: BOSCO JOAO
#ボサノバ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

O Bêbado e a Equilibrista (酔っ払いと綱渡り芸人) - 楽譜サンプル

O Bêbado e a Equilibrista (酔っ払いと綱渡り芸人)|歌詞の意味と歴史

基本情報

「O Bêbado e a Equilibrista(酔っ払いと綱渡り芸人)」は、作曲BOSCO JOAO(João Bosco)、作詞Aldir Blancによる1979年の楽曲。ブラジルの大衆音楽MPBの代表曲として知られ、Elis Reginaの録音で広く普及した。ポルトガル語の比喩と物語性が際立つ歌で、叙情的なメロディと精緻な和声が特徴。政治的含意を帯びながらも普遍的な希望と喪失を描き、世代を超えて歌われ続けている。

歌詞のテーマと意味

酔っ払いと綱渡り芸人という対照的な存在が、混沌と危うさの中をなお進む人間の姿を象徴する。酔いは現実の痛みや不条理をぼかし、綱渡りは希望のはかなさとしなやかさを体現。歌詞中には政治亡命者や行方不明者を想起させる言及があり、ユーモアと嘆きが交錯する。固有名の参照は具体的な人物や状況へのオマージュであり、個人の物語を通じて社会全体の記憶と回復への希求を描く。比喩の重層性が聴き手それぞれの解釈を促す点も重要だ。

歴史的背景

本作が発表された1979年は、ブラジル軍事政権(1964–1985)の末期で、検閲や弾圧を背景に市民の自由回復を求める機運が高まっていた。とりわけ同年の恩赦法の成立に象徴される「帰還」の空気と結びつき、この曲はアムネスティ運動の象徴的存在として受け止められた。露悪でもプロパガンダでもなく、詩情と諧謔を通じて社会の痛点を示したことで、多様な立場の人々に受容された点が、MPBにおける転換点として評価される理由である。

有名な演奏・映画での使用

Elis Reginaによる録音(1979年、アルバム情報不明)は決定的な名唱として知られ、作曲者João Bosco自身の演奏も高く評価される。以降、多数のブラジル人アーティストがカバーし、コンサートやテレビ番組などで繰り返し取り上げられてきた。一方で、映画での具体的な使用例は情報不明。録音や映像アーカイブは多く残り、歌の社会的文脈と不可分の形で記憶されている。

現代における評価と影響

本曲はMPBの重要レパートリーとして教育機関やメディアで扱われ、民主化過程を語るうえで欠かせない文化的資料とみなされている。ライヴでは観客の合唱を誘う定番曲であり、政治や社会の節目に再注目されることもしばしば。詩と音楽の統合、風刺と希望の均衡は、後続のソングライティングにも影響を与え、ブラジル音楽が持つ社会的発言のモデルケースとして参照され続けている。

まとめ

「O Bêbado e a Equilibrista」は、詩的比喩で個人と社会の痛みを抱えつつ、希望の均衡を志向した名曲である。1979年の歴史的文脈と結びつきながら、時代を超えて響く普遍性を獲得した。Elis Reginaの名唱を入口に、作曲・作詞の精緻さ、MPBの深みを改めて味わいたい。