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Passion Dance

  • 作曲: TYNER MC COY
#スタンダードジャズ
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Passion Dance - 楽譜サンプル

Passion Dance|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Passion Danceは、ピアニスト兼作曲家マッコイ・タイナー(表記:TYNER MC COY)によるジャズのインストゥルメンタル楽曲。初出は1967年、Blue Noteから発表されたアルバム『The Real McCoy』で、同作の冒頭を飾る代表曲として知られます。スタジオ録音はヴァン・ゲルダー・スタジオで行われ、メンバーはMcCoy Tyner(p)、Joe Henderson(ts)、Ron Carter(b)、Elvin Jones(ds)。歌詞は存在せず、ライブでもしばしばセット冒頭のエナジーを作るナンバーとして演奏されてきました。ジャンルはモーダル~ポスト・バップの文脈に位置づけられ、ピアノ・コンボの定番レパートリーとして広く親しまれています。

音楽的特徴と演奏スタイル

この曲は反復的なヴァンプと強靭なリズム・ドライヴを核に、モーダルな即興が展開される構造が特徴です。タイナー特有の四度堆積(クォータル)を活かした和声、力強い左手のオスティナート、右手の五音音階を軸とする旋律線が相互に噛み合い、厚い音響のうねりを生みます。テーマは短いモチーフを基点にしつつ、ドラムのポリリズムとベースの推進力が緊張と解放を作るため、ソロはリズム面のやり取りとダイナミクスの起伏が要。サウンドは鋭い打鍵と豊かなサステイン、密度あるアンサンブルで、端的に“炎”のようなエネルギーを描写します。

歴史的背景

タイナーは1960年代前半にJohn Coltrane Quartetの一員として名を高め、中期以降は自身のスタイルを確立。『The Real McCoy』(1967)はBlue Note移籍後の重要作で、Passion Danceはその芸風を端的に示すトラックです。コルトレーン・グループ時代に培ったモーダル語法と強靭なリズム感を、自己の名義作として結晶化させた点で象徴的な位置づけにあります。当時のジャズがハーモニーや拍感の自由度を拡張していく中、この曲は“モーダル以後”のピアノ言語を示す指標となりました。

有名な演奏・録音

基準となる録音は『The Real McCoy』でのカルテット版。ジョー・ヘンダーソンのテナーが荒々しくも知的なラインを描き、エルヴィン・ジョーンズのポリリズムとロン・カーターの安定感が厚みを支えます。タイナー自身はその後もライブで繰り返し取り上げ、ライヴ・アルバム『Passion Dance』(1978, Milestone)にも再演が収録。トリオ/カルテットの両形態でレパートリー化され、数多くのジャズ・ピアニストやコンボによって演奏され続けてきました。映画やテレビでの使用については情報不明です。

現代における評価と影響

Passion Danceは、マッコイ・タイナー流のハーモニーとリズム運用を学ぶ格好の教材として、音楽教育やジャム・セッションで頻繁に扱われます。四度堆積のヴォイシング、モーダルなライン構築、ダイナミクスのコントロールなど、現代ジャズ・ピアノの基礎体力を鍛える題材として定着。録音から半世紀以上を経ても、エネルギーの質感と構造の明快さは色褪せず、モダン・ジャズの“現在形”を体感できる一曲として高い評価を保っています。

まとめ

Passion Danceは、モーダル語法と圧倒的リズム感を軸にしたマッコイ・タイナーの代表曲。初出の『The Real McCoy』版は必聴で、その後の多様なライブ演奏も含め、現代まで続くピアノ表現の礎を示しています。歌詞はなく、インストゥルメンタルとしての構造美と即興の熱量が魅力。学習者にとっては実践的、リスナーにとってはタイナー美学の核心に触れられる名曲です。