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Beatriz

  • 作曲: GOES LOBO EDUARDO,LOBO EDU
#ボサノバ
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Beatriz - 楽譜サンプル

Beatriz|歌詞の意味と歴史

基本情報

Beatrizは、ブラジルの作曲家Edu Lobo(正式名:Eduardo de Góes Lobo)が手がけ、作詞をChico Buarqueが担当した楽曲。1983年の舞台作品『O Grande Circo Místico』のために書かれ、MPB(Música Popular Brasileira)の枠内で、室内楽的な気品を備えたバラードとして知られる。ポルトガル語の歌詞と繊細な旋律線、豊かな和声が相まって、発表以降、ブラジル音楽のスタンダードとして幅広く演奏・録音されてきた。

歌詞のテーマと意味

歌詞は、舞台やサーカス、クラシック・バレエのイメージを借りて、届きそうで届かない理想像への憧憬を描く。観る者のまなざしと舞台上の存在との距離、幻影と現実の境い目、愛と崇拝の狭間にある微妙な感情が、比喩に富んだ言葉遣いで表現される。Beatrizという名は象徴的存在であり、具体の人物像よりも、芸術が喚起する夢想や内面の反射を担う。過剰なドラマを避け、静けさの中に熱を宿す語り口が、曲の永続的な魅力を支えている。

歴史的背景

1980年代初頭のブラジルは、軍政の終焉へと向かう過渡期にあり、文化面では新たな表現の胎動がみられた。『O Grande Circo Místico』は、文学やバレエ、サーカスの伝統を横断する総合舞台として構想され、LoboとBuarqueの協働により、芸術への讃歌と人間の愛の多面性を音楽で描いた。その中に位置づけられるBeatrizは、作品全体の抒情的核として機能し、舞台を離れても自立した楽曲として広範な支持を獲得した。

有名な演奏・映画での使用

初演当時から多数の歌手が取り上げ、特にMilton Nascimentoによる録音は代表的名唱として広く知られる。作曲者Edu Lobo自身の演奏も高い評価を受け、声とピアノ、ギター、室内編成、オーケストラなど多様なアレンジで親しまれている。2018年には同名の映画企画が話題となり、原典舞台の楽曲群が改めて注目を集めた。個々の映像作品内での具体的使用状況は情報不明だが、楽曲の認知拡大に寄与したことは確かである。

現代における評価と影響

Beatrizは、MPBのレパートリーの中でも詩的精度と音楽的完成度の高さで評価され、音楽学校や声楽のリサイタルでもしばしば取り上げられる。和声はボサノヴァ由来の洗練を保ちながら、クラシカルな旋律線と相性よく融合し、言葉のアクセントを生かす運びがポルトガル語歌唱の教材としても重宝される。世代や国境を越えてカバーが続くことで、作品は“生きたスタンダード”として現在進行形の影響力を保っている。

まとめ

舞台発の名曲Beatrizは、理想と現実の揺らぎを繊細な言葉と音で描き、MPBの豊饒さを象徴する一篇となった。発表から年月を経ても新演奏が絶えず、名唱や新解釈が更新され続けること自体が、その普遍性の証左である。作品世界の核にある静謐な熱は、今なお聴き手の内面に深く響き、再生のたびに新たなイメージを喚起する。