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My Funny Valentine
- 作曲: RODGERS RICHARD

My Funny Valentine - 楽譜サンプル
My Funny Valentine|楽曲の特徴と歴史
基本情報
作曲はRichard Rodgers、作詞はLorenz Hart。1937年のブロードウェイ・ミュージカル『Babes in Arms(邦題:ベイブズ・イン・アームズ)』で初演され、キャラクターのバレンタインに向けて歌われたナンバーとして知られる。初演はミッツィ・グリーンによる歌唱として伝えられ、やがてポピュラーを越えてジャズ・スタンダードに定着。現在も世界中のセッションで演奏され続ける名曲である。
音楽的特徴と演奏スタイル
哀愁を帯びたマイナー感と滑らかな半音進行が特徴。AABAのソング・フォームで、内省的なAに対しBセクションで一時的に明度が差す設計が、歌詞のニュアンスと響き合う。テンポはバラードからミディアム・スウィングまで幅広く、繊細なルバートの導入や、トライトーン置換や裏コードを用いたリハーモナイズ、モーダルな解釈も定番。メロディは順次進行と抑制された跳躍を軸に、器楽ソロでも歌唱でも表情付けの余地が大きい。
歴史的背景
ロジャース&ハートは1930年代ブロードウェイを代表する名コンビ。本曲はショー・チューンとして書かれたが、戦後のジャズ・シーンで多くの奏者に取り上げられ、和声の柔軟さと旋律美が再評価された。出版譜と録音の普及によりスタンダード曲集に組み込まれ、歌ものとインストゥルメンタルの両面で普遍的レパートリーとなった。
有名な演奏・録音
名演は数多い。チェット・ベイカーはトランペットとヴォーカル双方で決定的な存在感を示し、端正で脆いニュアンスが曲のイメージを形作った。マイルス・デイヴィスは1964年フィルハーモニック・ホール公演を収めたライヴ・アルバムで長尺の緊張感とダイナミクスを提示。エラ・フィッツジェラルドの『ロジャース&ハート・ソングブック』、フランク・シナトラ、サラ・ヴォーン、トニー・ベネット&ビル・エヴァンス、ジェリー・マリガンらの録音も定番として参照される。
現代における評価と影響
現在も音大やワークショップで和声、歌唱、アドリブの教材として頻繁に扱われるジャム・スタンダード。バレンタイン期のプレイリストに上る一方、ジャズ以外のシンガー・ソングライターや室内楽的編成にも編曲が広がる。映画やドラマでの使用例は多いが、網羅的な一覧は情報不明。古典性と柔軟性を併せ持つ“歌える”スタンダードとして評価は揺るがない。
まとめ
『My Funny Valentine』はブロードウェイ発の一曲が、豊かなハーモニーと抒情性によってジャンルと時代を越えて生き続ける好例である。初学者は原曲のシンプルな変化を押さえ、名演同士のテンポ感や間合い、リハーモナイズを比較すると理解が深まる。演奏者にとってはダイナミクス設計と歌心の両立が鍵となるだろう。