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September In The Rain

  • 作曲: WARREN HARRY
#スタンダードジャズ
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September In The Rain - 楽譜サンプル

September In The Rain|楽曲の特徴と歴史

基本情報

September In The Rain は、作曲家Harry Warren(表記:WARREN HARRY)と作詞家Al Dubinによって1937年に発表されたポピュラー・ソングで、のちにジャズ・スタンダードとして定着した。初出は映画「Melody for Two」(1937)で、甘やかなメロディと洒脱な詞世界が特徴。一般的に32小節AABA形式で知られ、歌ものとしても器楽としてもよく取り上げられる。題名が示すとおり、9月の雨に喚起される記憶と余韻を描く季節感の強い曲で、日本でもスタンダード曲集やセッションで目にする機会が多い。

音楽的特徴と演奏スタイル

旋律は素直な上行・下行を丁寧に配し、Aセクションで親しみやすい動機を提示、B(ブリッジ)で和声色を変えて再度Aに回帰する古典的構成。和声はセカンダリー・ドミナントや循環進行を織り込み、メロディの抑揚を上品に支える。テンポはミディアム・スウィングが定番だが、バラードやボサ・ノヴァ解釈も相性が良い。ヴォーカルはレガート主体で語尾のニュアンスが鍵となり、器楽演奏ではテーマのシンプリシティを尊重しつつ、ガイド・トーンを意識したコーラス展開が映える。エンディングはフェルマータやタグで余情を残す処理がよく用いられる。

歴史的背景

1930年代後半のハリウッド音楽シーンは、映画主題歌がポピュラー・ソング市場を牽引し、その多くが後年ジャズの定番へと移行した時代。WarrenとDubinの名コンビは数多くの映画音楽を世に送り出し、本曲もその成功例に数えられる。発表当初からダンスバンドやラジオで広まり、楽曲の親和性の高さが多様な解釈を生んだ。戦後、ビッグバンドからコンボ時代へと主流が移る中でも、歌唱・器楽の双方でレパートリーとして温存され、グレイト・アメリカン・ソングブックの一角を占める存在となった。

有名な演奏・録音

名演は数多い。特にDinah Washingtonの録音は広く知られ、洗練されたフレージングで曲の魅力を再定義した一例とされる。Frank Sinatraも取り上げ、流麗なレガートとオーケストレーションでスタンダードとしての格を示した。またThe BeatlesがBBCセッションで披露したカヴァーは、ロック世代がスタンダードを再提示する契機となった代表例。ビッグバンドから小編成、器楽アレンジまで幅広いフォーマットで録音が残り、各アーティストの時代感覚と解釈が聴き比べの妙を生む。

現代における評価と影響

今日でもジャズ教育現場やセッションで頻出し、メロディ重視の歌心と、無理のない和声進行が学習・実演の双方に適していると評価される。秋を想起させる情緒と普遍的な恋愛モチーフは、季節プログラムやテーマ公演にも採用されやすい。ヴォーカリストにとっては言葉の置き方やブレス運用を磨ける教材となり、器楽奏者にとってはAABAに沿ったコーラス設計やモチーフ開発を学ぶうえで格好の素材である。新録の継続と配信時代の再発見を通じ、スタンダードとしての生命力を保ち続けている。

まとめ

September In The Rainは、映画発のポピュラー・ソングがジャズ・スタンダードへ昇華した典型例であり、端正な構成と詩的な季節感が長く愛される理由だ。歌・器楽いずれにも開かれた懐の深さが、時代ごとの解釈を受け止め、名演の蓄積を促してきた。初学者から上級者まで、表現力と構成力を磨ける実用曲として、そして聴き手の情景を呼び起こす名曲として、今後も演奏現場で息長く生き続けるだろう。