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Tangerine
- 作曲: SCHERTZINGER VICTOR

Tangerine - 楽譜サンプル
Tangerine|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Tangerineは、作曲家ヴィクター・シャーツィンガーが手がけ、作詞をジョニー・マーサーが担当した1940年代のポピュラー曲で、のちにジャズ・スタンダードとして定着した。映画『The Fleet's In』(1942)で世に出て、同年ジミー・ドーシー楽団の録音が全米で大きな成功を収めたことで広く知られるようになった。ヴォーカル曲として書かれているが、旋律と和声が即興に適しており、インストゥルメンタルでも頻繁に演奏される。
音楽的特徴と演奏スタイル
滑らかな旋律線と軽快なスウィング感が核となり、ミディアムからややアップテンポまで幅広いテンポで親しまれる。ヴォーカルでは歌詞の語感がメロディに自然に馴染み、ジャズの解釈ではメロディを保ちつつアドリブ・コーラスで展開するのが一般的だ。形式はスタンダードで見られる32小節型として扱われることが多く、シンプルなコード進行にリハーモナイズの余地があるため、ビッグバンド、コンボ、デュオなど編成を問わずレパートリーに入りやすい。
歴史的背景
第二次世界大戦期のハリウッドで、映画音楽やポピュラー曲がラジオとレコードを通じて急速に拡散した時代に誕生した。映画監督・作曲家として活動したシャーツィンガーと、名作詞家ジョニー・マーサーのコラボレーションはこの時期に成果を上げ、同作のほかにも数多くの楽曲がスタンダード化していく。Tangerineはその代表例のひとつで、スクリーン発の流行曲がジャズ現場へと浸透する典型的なルートを辿った。
有名な演奏・録音
決定的な普及のきっかけは、ジミー・ドーシー&ヒズ・オーケストラによる1942年のヒット録音である。映画『The Fleet's In』での使用も相まって知名度が広がり、その後は多数のビッグバンドやスモール・コンボが取り上げ、インスト版も定番化した。具体的な録音の網羅的リストは情報不明だが、各種ディスコグラフィやジャズ・スタンダード集に継続的に収録され、世代を超えて演奏され続けている。
現代における評価と影響
今日ではヴォーカル・ステージからジャム・セッションまで幅広く通用するスタンダードとして位置づけられている。歌ものとしての親しみやすさと、アドリブ展開に耐える構造の両立が評価され、教育現場でも取り上げられる機会が多い。配信時代になっても新録音が途切れず、アレンジの自由度が高いことからスウィング、ラテン風味、バラード寄りなど多様な解釈で再生産されている。
まとめ
Tangerineは映画発のポピュラー曲として生まれ、ジャズ・スタンダードへと定着した稀有な成功例である。明快なメロディと柔軟なハーモニーが、歌と演奏の双方で魅力を発揮し、世代や編成を超えて愛奏されてきた。初演から80年以上が過ぎても、その普遍性は色褪せていない。