Oblivion
- 作曲: POWELL EARL BUD

Oblivion - 楽譜サンプル
Oblivion|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Oblivionは、ジャズ・ピアニストとして知られるPOWELL EARL BUD(バド・パウエル)によるインストゥルメンタル作品。作曲の正確な年や初出盤は情報不明だが、彼のビバップ期の語法を色濃く帯びた小品として扱われることが多い。歌詞を伴わない器楽曲であり、ピアノを中心としたコンボ編成で演奏されるのが一般的。タイトルが示す“忘却”の感覚を、緊張と緩和を織り交ぜた線的フレーズと和声の推進力で描き出すタイプの楽曲として受け取られている。
音楽的特徴と演奏スタイル
ビバップに典型的な速いパッセージ、拡張和音、オルタード・ドミナント、半音階的接近音が随所に現れる。右手は鋭いシングルトーンでメロディを紡ぎ、左手は殴打的になり過ぎない薄いコンピングでリズムと和声の輪郭を支える。テーマ提示—ソロ—テーマ回帰というジャズの定石的フォームで演奏され、テンポ設定はミディアムからアップまで幅がある。即興ではガイドトーンの連結、トライトーン・サブ、ターゲットノートへの囲い込みが効果的。ピアニストはタッチの明瞭さとボイスリーディング、管楽器はラインの明晰さと休符の使い方が聴きどころとなる。
歴史的背景
バド・パウエルは1940〜50年代のモダン・ジャズ黎明を牽引したピアニストで、チャーリー・パーカーらと並びビバップ語法を鍵盤上で確立した存在。Oblivionは、彼が築いた線的即興とハーモニー運用のエッセンスを示すレパートリーとして位置づけられる。作曲の経緯や初演情報は情報不明だが、当時のニューヨークを中心とするビバップ・シーンにおける実践的な習作/舞台作品として継承され、後続のモダン・ピアノの教科書的素材にもなっている。
有名な演奏・録音
最も参照されるのは作曲者バド・パウエル自身による録音で、彼の鋭利な右手ラインと簡潔な左手コンピングが楽曲の語法を端的に示す。具体的な録音年や収録アルバムは情報不明だが、ソロまたはトリオ編成での演奏が知られ、後年のピアニストや小編成コンボによるカバーも散見される。現行の配信プラットフォームやアーカイブでは複数のテイクに触れられる場合があるが、網羅的ディスコグラフィ情報は情報不明である。
現代における評価と影響
Oblivionは、パウエル作品の中でも演奏頻度が突出して高い“定番”とまでは言えないものの、ビバップ期の語法研究や即興練習の教材としては有用だと評価される。特に、緊密なライン構築、テンションの配置、シンコペーションの置き方を学ぶ題材として重宝される。教育現場やワークショップでも取り上げられることがあり、分析譜やトランスクリプションを通じて、現代のプレイヤーが自らの語彙に取り入れるケースも見られる。
まとめ
Oblivionは、バド・パウエルのビバップ美学を凝縮したインストゥルメンタル曲で、機能的和声と鋭いラインが要。初出や年譜などに情報不明点は残るものの、演奏・学習の両面で価値が高い。聴取の際は、テーマと即興のコントラスト、ガイドトーンの運び、左手の省略美に注目したい。パウエルの他作品と併せて鑑賞することで、モダン・ジャズ・ピアノの核心により深く触れられるだろう。