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Who Can I Turn To
- 作曲: NEWLEY ANTHONY GEORGE

Who Can I Turn To - 楽譜サンプル
Who Can I Turn To|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Who Can I Turn To(When Nobody Needs Me)」はAnthony Newley作曲、Leslie Bricusse作詞による楽曲。1964年のミュージカル「The Roar of the Greasepaint – The Smell of the Crowd」に収録され、後年ジャズ・ヴォーカル/インスト双方の主要レパートリーとして広く定着した。内省的な歌詞とメロディが特徴で、原典は舞台歌曲ながら、今日では“スタンダード曲”として認知されている。
音楽的特徴と演奏スタイル
柔らかなバラード感と、切なさを湛えた旋律線が核。和声は副次ドミナントや転調感を活かし、問いかけるようなフレーズから解放へ向かう設計が巧みだ。テンポはスロー〜ミディアムでの演奏が多く、ヴォーカルでは言葉の間合いとブレスの置き方が肝要。器楽ではレガート主体の歌心あるアプローチが好相性で、ミディアム・スイングやボサノヴァ風など多様な解釈にも耐える設計を持つ。
歴史的背景
本曲は、同じくNewley–Bricusseの「Feeling Good」と並び、1960年代半ばの英国発ミュージカルからポピュラー音楽へ橋渡しした代表例。舞台での成功を足掛かりにレコードでのカヴァーが増加し、ジャズ・クラブやラジオを通じて浸透した。当時のクロスオーバー状況—ブロードウェイ/ウェストエンド曲がジャズに取り込まれる潮流—を象徴するナンバーとして位置づけられる。
有名な演奏・録音
ヴォーカルではトニー・ベネット、シャーリー・バッシー、ディオンヌ・ワーウィックらの録音がよく知られる。ジャズ側でも多くのピアニストやトリオ編成が取り上げ、バラードでの濃密なハーモニー処理や、ミディアムでの流麗なアドリブ構築が聴きどころとなった。アレンジの自由度が高く、弦楽付きのオーケストラルなスケールから、小編成の親密な室内楽的表現まで幅広い名演が存在する。
現代における評価と影響
今日ではジャズ・ヴォーカルの定番曲として教育現場やセッションでも頻出。歌詞の内省性は現代のリスナーにも響き、翻案やリハーモナイズの題材としても重宝される。ポップスとジャズの境界を軽やかに越える書法は、ステージ楽曲がスタンダード化するプロセスの好例であり、アーティストが物語性と即興性を両立させるレパートリーとして欠かせない存在になっている。
まとめ
「Who Can I Turn To」は、舞台由来の旋律美とジャズ的再解釈の余地を併せ持つ不朽のスタンダードである。叙情的なハーモニーと問いかける歌詞が、時代や編成を超えて新しい表現を誘発し続けてきた。初学者には表現力を磨く教材として、上級者には解釈の幅を示す実演曲として、いまなお重要な位置を占める一曲と言える。