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Berimbau

  • 作曲: POWELL BADEN
#ボサノバ
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Berimbau - 楽譜サンプル

Berimbau|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Berimbauは、ブラジルのギタリスト/作曲家バーデン・パウエルによる作品で、作詞は詩人ヴィニシウス・ジ・モライス。ジャンルはボサノヴァとアフロ・サンバの接点に位置し、歌詞付きの楽曲として知られつつ、インストゥルメンタルでも広く演奏される。題名の“ベリンバウ”はカポエイラで用いられる一弦打楽器の名称で、曲のアイデンティティを象徴する。初出年は情報不明だが、1960年代の両者の協働期に確立したレパートリーで、ポルトガル語歌唱が標準。以降、国とジャンルを越えて録音・演奏が続く定番曲となった。

音楽的特徴と演奏スタイル

リズムの推進力と反復するモチーフが核。ギターの低音とコードを組み合わせたパルスがシンコペーションを生み、打楽器がそれを補強する。旋律は短調系の情感を帯び、端的で覚えやすいフレーズが歌と器楽の双方で機能する。歌唱はビートの後ろに“溜め”を置く表現が似合い、合唱的なコール&レスポンスも映える。ジャズ的アプローチでは、和声の複雑化よりもリズムの微細なニュアンスを拡張する即興が効果的。テンポは中庸が標準だが、サンバ寄りに速めても、ボサ寄りにしなやかに揺らしても本質が保たれる。

歴史的背景

1960年代、バーデン・パウエルとヴィニシウス・ジ・モライスは、アフロ・ブラジルの宗教的・民俗的要素と都会的なボサノヴァ感性を融合する試みを展開した。Berimbauはその代表格で、カポエイラ文化に根差す象徴をタイトルに掲げ、黒人文化のリズム的語彙をポピュラー音楽の文脈へと架橋した。これにより、サンバの源流と現代的洗練の両立が具体化し、ブラジル音楽の多層性を世界に印象づける一端を担った。作品成立の厳密な年次は情報不明だが、時代状況と美学的潮流に合致した企図として受容が進んだ。

有名な演奏・録音

バーデン・パウエル自身の録音は、ソロ・ギター主体の緊密な表現から、歌と合唱を伴う大きなスケール感まで幅広い。特に、ヴィニシウスとの協働作『Os Afro-Sambas』関連の解釈は、楽曲の核心—リズム、祈り、簡潔な旋律—を強く提示する参照点だ。以後、ブラジル国内外の歌手、ジャズ・ミュージシャン、室内編成やビッグバンド的アレンジに至るまで、多数のヴァージョンが制作されている。各録音は、打楽器の配分やテンポ運用、声の重ね方で性格が大きく変わるため、複数の版を聴き比べる価値が高い。

現代における評価と影響

Berimbauは、ブラジル音楽とジャズのレパートリー双方で持続的に演奏される定番曲となっている。教育現場やコンサートの解説文脈でも、ベリンバウという楽器やアフロ・ブラジルのリズム観を示す例として取り上げられることが多い。ギタリストにとっては、低音とコードの独立運動、シンコペーションの精緻な扱い、ダイナミクス設計の教材としても有用。聴衆側にとっては、簡潔なモチーフが反復によって高揚を生む構造がわかりやすく、ライブでの呼応が生まれやすい点が支持を集める理由となっている。

まとめ

Berimbauは、象徴的な題名が示すリズム感と、簡潔に凝縮された旋律美、そして詩性が三位一体となった名曲である。歌入り・器楽どちらにも耐える設計と、編成やテンポに応じて表情を変える柔軟性が、時代と地域を越える普遍性を担保してきた。入門者はバーデン・パウエルの録音から出発し、打楽器の存在感や合唱の有無による表情の差を追うと理解が深まる。歴史と現在をつなぐスタンダードとして、今後も演奏と再解釈が重ねられていくだろう。