Invisible (The)
- 作曲: COLEMAN ORNETTE

Invisible (The) - 楽譜サンプル
Invisible (The)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Invisible (The)」は、サックス奏者オーネット・コールマンによるインストゥルメンタル曲。初出は1958年、Contemporary Recordsから発表されたデビュー作『Something Else!!!! The Music of Ornette Coleman』に収録された録音で、編成はアルトサックス、トランペット、ピアノ、ベース、ドラムのクインテット。作詞情報は存在せず、歌詞はない。調性・拍子などの詳細な出版データは情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
主旋律は鋭角的で跳躍の多いラインが特徴で、トランペットとのユニゾン/オクターブで提示されることで独特の輪郭を生む。典型的なヘッド—ソロ—ヘッド構成を取りつつ、アルトとトランペットの即興はブルースの語法やシンコペーションを交え、和声に縛られすぎない推進力を示す。ピアノが和音の骨格を提示しつつも、ソリストはフレーズの重心を自由に移動させ、フロント同士の掛け合いが緊張感を高める。テンポは躍動的で、リズム・セクションはスウィング感を保ちながら細かなアクセントで前進力を支える。
歴史的背景
1950年代後半のロサンゼルスで活動していたコールマンは、同時代ビバップ以降のジャズに対し、旋律の自律性を重視する作曲・即興の方法を模索していた。『Something Else!!!!』はピアノを含む編成だが、翌年以降のアトランティック時代には無和声音色への志向を強め、ピアノレス編成へ移行する。その過渡期に位置する「Invisible (The)」は、従来のコード進行を参照しながらも、フレーズ運動に主眼を置く初期コールマンらしさを示すトラックとして位置づけられる。
有名な演奏・録音
代表的な音源は前述の1958年盤。メンバーはオーネット・コールマン(alto saxophone)、ドン・チェリー(trumpet)、ウォルター・ノリス(piano)、ドン・ペイン(bass)、ビリー・ヒギンズ(drums)。同音源は各種リイシューやデジタル配信で広く入手可能で、楽曲を知る最初の参照として信頼できる。これ以外の公的な初演情報や別テイクの詳細は情報不明。
現代における評価と影響
本曲は「Lonely Woman」などの代表作ほど一般的に言及される機会は多くないが、初期コールマンの作曲語法とアンサンブル運用をコンパクトに体験できる教材的価値が高い。メロディ重視の発想、二管の同時進行、リズム・セクションの柔軟な支え方は、モダンからフリーへ至る美学の橋渡しとして研究対象となっている。作曲家・即興家としてのコールマン像を理解する上で、本曲は入口として有用だと評価される。
まとめ
「Invisible (The)」は、端正なテーマと自由度の高い即興が共存する初期オーネットの要所。1958年の収録テイクを軸に聴けば、後年のピアノレス期へつながる美学の萌芽が見えてくる。まずはデビュー盤の収録音源で、その輪郭と推進力を確かめたい。