Maids Of Cadiz
- 作曲: DELIBES LEO CLEMENT PHILIBERT

Maids Of Cadiz - 楽譜サンプル
Maids Of Cadiz|作品の特徴と歴史
基本情報
Maids Of Cadiz(仏題:Les filles de Cadix)は、Léo Delibes(レオ・ドリーブ)が作曲したフランス歌曲(メロディ)。原詩はAlfred de Mussetによるフランス語詩で、声楽とピアノのために書かれ、後に管弦楽版や種々の伴奏編も用いられる。陽気で華やかなボレロの趣を持ち、独立した演奏曲としてリサイタルで親しまれている。初出年は情報不明だが、19世紀後半のフランス歌曲を代表する小品の一つとして定着している。
音楽的特徴と表現
三拍子系のボレロ・リズムが全曲を貫き、右手の軽快な分散和音と左手のオスティナートがスペイン風の色彩を醸す。旋律は明朗で跳躍が多く、トリルやスケール、スタッカートなどの技巧がふんだんに要求される一方、言葉の抑揚に寄り添うレガートも要。テキストの気ままさや奔放さを、明暗の対比やアジリタの冴えで描き出す。終盤に向けてテンポ感と活気が増し、華麗なコロラトゥーラで締めくくられることが多い。
歴史的背景
19世紀フランスでは“エスパニョラード”と呼ばれるスペイン趣味が流行し、ドリーブもその流れの中で本作を生んだ。彼はバレエ『コッペリア』『シルヴィア』やオペラ『ラクメ』で名高いが、洗練された小品や歌曲でも手腕を示した。本作はサロン文化の隆盛とも相まって、演奏会用の鮮やかなアンコール曲として広まった。スペインの都市カディスを題材にした陽気な情景は、当時の異国趣味への憧れを端的に体現している。
使用された映画・舞台(該当時)
特定の映画作品や劇作品での明確な使用記録は情報不明。歌曲自体は独立曲として位置づけられ、コンサートやコンクール、教育現場のリサイタルで頻繁に取り上げられる。器楽編曲版やオーケストラ伴奏版も流通し、プログラムの色どりや場面転換の華を添える小品として選ばれることがあるが、個別の映像作品での使用データは確認できない。
現代における評価と影響
フランス歌曲の入門かつ技巧披露の“ショーピース”として、ソプラノを中心に定番化。録音も多く、ピアノ伴奏版のほか、管弦楽伴奏や室内編成での演奏も行われる。さらに、Gil Evans編曲によるMiles Davis『Miles Ahead』(1957)の「The Maids of Cadiz」は本旋律を素材にした名演で、クラシック外の文脈でも知名度を高めた。声楽教育やオーディションのレパートリーとしても息長く支持されている。
まとめ
Maids Of Cadizは、スペイン趣味の色彩、歌心と超絶技巧の均衡、舞台作曲家ドリーブの職人技が凝縮した小品。正確なリズムと明瞭な発音、軽やかなアーティキュレーションを備えることで、陽光のような明るさと気品を両立できる。短時間で鮮烈な印象を残し、プログラムのアクセントとしても映える、普遍的な魅力を持つ歌曲である。