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Oh No

  • 作曲: ZAPPA FRANK VINCENT
#スタンダードジャズ
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Oh No - 楽譜サンプル

Oh No|歌詞の意味と歴史

基本情報

『Oh No』は、フランク・ザッパ(作曲・作詞)による楽曲で、1970年にザ・マザーズ・オブ・インベンションのアルバム『Weasels Ripped My Flesh』で広く知られるようになった。風刺性の強いテキストと、ロックを基調にした複雑なアレンジが特徴。スタジオ録音とライブ素材を基にした編集文脈の中で提示され、ボーカルを含む“歌もの”として位置づけられる。旋律と伴奏の緊密なせめぎ合いが聴きどころで、知的なユーモアと批評性が同居する代表的ナンバーである。

歌詞のテーマと意味

歌詞は「愛がすべて」といったポップ・ソングの常套句や、音楽産業が流通させる楽天的メッセージへの懐疑を主題化する。語り手は甘美な恋愛像を突き放し、現実の不条理や欲望の構造を暴く方向へ舵を切る。直接的な嘲笑、逆説、誇張といったレトリックを駆使し、聴き手に批判的思考を促すのが核心だ。恋愛を称揚する言葉を形式的に借りながら、その裏側を露わにすることで、流行歌の価値観を相対化し、ロックの表現領域を拡張している。

歴史的背景

1960年代末はカウンターカルチャーの高揚と商業化が交錯した時期で、ザッパはロックの制度化や空疎なスローガン化を鋭く批判していた。『Weasels Ripped My Flesh』は主に1967〜69年の録音素材から編まれた編集盤で、『Oh No』もその流れに含まれる。アルバム全体に見られる断片性や実験性は、当時のザ・マザーズ・オブ・インベンションの可変的な編成と創作態度を反映し、楽曲の風刺的視点と音響的アグレッションが同時に刻印されている。

有名な演奏・映画での使用

代表的な公式音源は『Weasels Ripped My Flesh』収録版で、続くトラック『The Orange County Lumber Truck』へ連接する構成が印象的である。コンサートでは他曲とのメドレー化や即興的な展開が加えられ、構造の可塑性が強調されることが多い。ライブ公式リリースにも収録例があり、時期や編成によってテンポ感や間合いが変化する点が魅力。映画やテレビでの顕著な使用については情報不明。

現代における評価と影響

『Oh No』は、恋愛至上主義への風刺と高度な作曲技法を結び付けた作例として評価される。シンコペーションや拍節感の攪乱、時にテンポや調性の切り替えを伴う構築が、辛辣なテキストと拮抗し、アート・ロック/実験志向の後続へ示唆を与えた。批評や研究でも引用される機会が多く、ザッパの言語批評と音楽的精緻さが同軸で機能する典型として位置づけられている。トリビュート公演や再演でも存在感は根強い。

まとめ

『Oh No』は、辛辣な言葉と知的な構築美を併せ持ち、時代の空気への異議申し立てを音楽内部で実現した楽曲である。恋愛歌の型を借りつつその規範を転倒させる手つきは独創的で、聴くたびに新たな読み替えを誘う。公式な映画使用や一部クレジットの詳細は情報不明な点もあるが、作品が示す批評精神と音楽的精度は普遍性を備え、現在もロック表現の重要な参照点であり続けている。