Schizophrenia
- 作曲: SHORTER WAYNE

Schizophrenia - 楽譜サンプル
Schizophrenia|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Schizophreniaはサックス奏者・作曲家ウェイン・ショーターによるインストゥルメンタル曲。ブルーノートから発表された同名アルバムに収録され、ショーターの作曲美学を象徴する一作として知られる。編成はホーンの重なりが要で、テナーサックス(ウェイン・ショーター)、トロンボーン(カーティス・フラー)、アルトサックス/フルート(ジェームス・スパルディング)、ピアノ(ハービー・ハンコック)、ベース(ロン・カーター)、ドラムス(ジョー・チェンバース)。歌詞はなく、作詞者も情報不明。アルバム収録曲として記録される形で広く聴かれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
ポスト・バップ期のショーターらしく、調性感を曖昧に揺らす和声と、短い動機を巧みに展開するテーマが特徴。ホーン・セクションはユニゾンとハーモナイズを行き来し、鋭いアクセントとレガートの対比で立体感を生む。リズム面では中速から速めのテンポ感の中でドラムが細やかなシンコペーションを提示し、ピアノとベースは推進力と余白を両立させたコンピングでソロを支える。全体に過度な装飾を避けつつ、構造的な緊張と解放を積み重ねる書法が、重厚でありながら透明感のある音像を実現している。
歴史的背景
本作が収められたアルバムは、1960年代後半のショーターのブルーノート期に位置づけられる。彼は同時期、マイルス・デイヴィスのクインテットで活動しながら、作曲家として独自の言語を急速に発展させていた。ハード・バップの語彙を踏まえつつ、モーダルな発想や自由度の高いフォームを統合し、のちのフュージョン/エレクトリック期へ至る前夜の気運を示す作品群の一角をなす。Schizophreniaはその過渡期のムードを凝縮し、即興とアレンジの均衡が際立つ。
有名な演奏・録音
基準となるのは、ウェイン・ショーター名義のスタジオ録音。前述のメンバーによるアンサンブルは、ホーンの重ね方とリズム隊の応答性において完成度が高く、楽曲解釈の出発点として参照されることが多い。以降も再発やデジタル配信で容易にアクセス可能となり、学生バンドや小編成コンボによるレパートリー例も見られる。ただし、FootprintsやInfant Eyesのような広義の“スタンダード”ほど頻繁に演奏される曲ではない。
現代における評価と影響
Schizophreniaは、ショーターの「書法」と「即興の場」の緻密な接続を学ぶ教材として評価が高い。特に、ホーンのボイシングとテーマ提示からソロへの受け渡し、そしてエンディングに至る設計は、現代ジャズ作編曲の手本として研究対象になっている。また、再発やアーカイブ整備により同曲の存在感は安定し、ショーター作品全体の再評価の中で、個性の際立つ1曲として位置づけられている。
まとめ
ウェイン・ショーター作曲のSchizophreniaは、ポスト・バップ期の美学を凝縮したインスト曲であり、重層的なホーン書法と柔軟なリズム運用が聴きどころ。同名アルバムの中核を成し、作曲と即興の高度なバランスを示す。定番曲ほどの露出はないものの、作編曲を学ぶうえでの示唆に富み、今日でも研究・演奏の対象として価値を保ち続けている。