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Straight Up And Down (Dolphy)

  • 作曲: DOLPHY ERIC
#スタンダードジャズ
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Straight Up And Down (Dolphy) - 楽譜サンプル

Straight Up And Down (Dolphy)|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Eric Dolphy作曲のインストゥルメンタル。「Straight Up And Down」はBlue Noteの名盤『Out to Lunch!』に収録され、1964年2月25日、ニュージャージー州エンゲルウッド・クリフスのVan Gelder Studioで録音。編成は木管(Dolphy)、トランペット(Freddie Hubbard)、ヴィブラフォン(Bobby Hutcherson)、ベース(Richard Davis)、ドラム(Tony Williams)のクインテット。Dolphyの作家性が結実した、先鋭と抒情が同居する一曲である。

音楽的特徴と演奏スタイル

鋭角的な主題、跳躍の大きい音程、予測を裏切るアクセントが特徴。ヴィブラフォンの透明な響きと、ベースとドラムのポリリズムが生む揺らぎが、緊張と遊泳感を同時に作る。ソロは動機の分解と再構築に重心があり、各奏者が間合いと沈黙を効果的に扱う。定型の循環進行に寄らない開放的なフォームが印象的で、和声の曖昧さと明快なリズム的フレーズがせめぎ合う設計となっている。

歴史的背景

1964年当時、Blue Noteは前衛志向の作家に創作の自由を与えており、Dolphyもその中心的人物の一人だった。若きTony Williamsの革新的ドラミングを得て、ポスト・バップとフリーの境界を押し広げた。同年6月にDolphyは急逝し、本作を含むアルバムは没後に発表され、彼の遺作的意義を帯びることとなった。モダンジャズが構造と即興の新たな均衡点を模索した時代精神を、端的に刻んだトラックである。

有名な演奏・録音

決定的録音は、オリジナルの『Out to Lunch!』収録テイク。バンドの化学反応と録音クオリティが両立し、作品理解の基準点となる。以降、研究・トリビュート企画や教育現場で取り上げられることがあるが、他演奏の網羅的な商業録音情報は情報不明。近年も各種リマスターやアナログ再発により高音質盤が流通し、初聴者にもアクセスしやすい環境が整っている。

現代における評価と影響

複雑さと明快さを併せ持つ設計は、作曲と即興の接点を探る現代ジャズの参照軸として評価が高い。ヴィブラフォンを中核に据えた編成、拍感のずらし方、モチーフ駆動のアドリブは多くの演奏家に影響を与え、分析対象として音楽教育でも扱われることが多い。Dolphyの音楽が示す自由度は、今日のクリエイティブ・ミュージックの礎として生き続けている。

まとめ

Straight Up And Downは、強靭な主題と自由度の高いフォームを両立させたDolphyの美学を象徴する一曲。録音・編成・文脈が相乗し、1960年代以降の創造的ジャズを読み解く鍵となる。インストゥルメンタルのため歌詞は存在せず、作詞者は情報不明。まずは『Out to Lunch!』の当該トラックを基準点として聴き、各楽器の相互作用とリズムの揺らぎに注目すると本作の核心に迫れるだろう。