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Valdez In The Country

  • 作曲: HATHAWAY DONNY E
#スタンダードジャズ
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Valdez In The Country - 楽譜サンプル

Valdez In The Country|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Valdez In The Country」は、作曲者HATHAWAY DONNY E(ドニー・ハサウェイ)によるインストゥルメンタル。1973年のアルバム『Extension of a Man』(Atlantic)に収録され、公式な歌詞は存在しない。ハサウェイの作編曲センスと鍵盤奏者としての資質が凝縮された代表的トラックとして知られる。歌ものの名手という評価に加え、器楽曲でも独自の色彩と構成力を示した点で、キャリアを語る上で欠かせない一曲である。

音楽的特徴と演奏スタイル

中速のソウル・ジャズ/ジャズ・ファンクのグルーヴが要。タイトなドラムとうねるベースの上で、エレクトリック・ピアノの鋭いリフとブラスのユニゾンが推進力を与える。ゴスペル由来の豊かな和声感、印象的なヴァンプ、コール&レスポンス的なフレーズ配置により、シンプルなモチーフから高揚感を積み上げる設計。ソロはメロディ志向で歌心が強く、アンサンブル全体はダイナミクスの出入りが明確で、ライブ的な熱量を感じさせる。スタジオ録音ながら、ステージでの展開を想起させる余白が巧みに残されている。

歴史的背景

1970年代初頭、ソウルとジャズ、ファンクの垣根が曖昧になっていく潮流の中で、ハサウェイは歌ものだけでなく器楽曲でも作曲家・アレンジャーとしての野心を示した。『Extension of a Man』はその到達点のひとつで、本曲は同作の多彩なサウンド・パレットの中で、都会的でありながら暖かな手触りを持つ楽曲として位置づけられる。アルバム全体の中でもグルーヴの核を担い、同時代のジャズ・ファンクに呼応しつつ、ハサウェイ固有のハーモニー感覚を刻印した。制作の詳細な録音地・参加ミュージシャンは情報不明。

有名な演奏・録音

基準となるのは1973年のオリジナル・ヴァージョン。その後はジャズ/フュージョン系のミュージシャンに広く取り上げられてきた。特にギタリスト、ジョージ・ベンソンによる録音は知名度が高く、ギター編成でも映えるメロディと強靭なヴァンプの魅力を再確認させた。ビッグバンドや小編成コンボによるアレンジ例も散見されるが、網羅的なディスコグラフィや特定年次は情報不明。

現代における評価と影響

鍵盤奏者のレパートリーやジャズ・ファンク系のセットリストで定番視され、クラブ/コンサート双方の現場で息長く演奏されている。ストリーミング時代においても聴取が伸び、ソウル・ジャズの入門曲として紹介されることが多い。リフが明快で和声が豊かなため、バンドのアンサンブル学習やアドリブ研究の教材としても価値が高い。再発盤やプレイリスト経由で新規リスナーに届き続け、世代を超えて評価を更新している。

まとめ

「Valdez In The Country」は、歌手としての名声にとどまらないハサウェイの作曲力を示すインストゥルメンタルの名品。ファンキーでありつつ温度感のあるサウンドは時代を超えて機能し、演奏家には自由度の高い素材、リスナーには即効性のある高揚を提供する。1973年発の普遍的なグルーヴは、現在もなお鮮度を失わない。