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Water Babies

  • 作曲: SHORTER WAYNE
#スタンダードジャズ
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Water Babies - 楽譜サンプル

Water Babies|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Water Babies」は、サックス奏者・作曲家ウェイン・ショーターによるインストゥルメンタルのジャズ作品。歌詞は存在せず、主に小編成コンボで演奏される。初出として広く知られるのは、マイルス・デイヴィス名義のアルバム『Water Babies』(1976年発表、録音は1967〜1968年)に収録された同名曲で、作曲者表記はWayne Shorter。ショーターの60年代後半の作風を象徴する一曲として、ポスト・バップ期のレパートリーに数えられる。

音楽的特徴と演奏スタイル

ショーター特有の曖昧で移ろう和声感と、簡潔な動機を核にした主題が特徴。明確な機能和声に依存せず、モーダルな設計や半音階的な行き来を織り交ぜて、静的と動的のあいだを揺らぐサウンドスケープを描く。テンポ感は中庸〜やや抑制的なことが多く、ドラムはシンバル・ワークで空間を描写し、ピアノはヴォイシングの陰影で応答、ベースは持続音やリニアなラインで色彩を補う。アドリブはコード進行の消化よりも動機展開と対話性に比重が置かれ、全体として会話的インタープレイが求められる。

歴史的背景

1960年代後半、マイルス・デイヴィスのセカンド・クインテット(Miles Davis, Wayne Shorter, Herbie Hancock, Ron Carter, Tony Williams)は、ポスト・バップから先鋭的なモーダル探究へと舵を切った。その過程で生まれたスタジオ録音の一部が後年『Water Babies』として発表され、「Water Babies」もそこで知られるようになった。ショーターは同時期に「Nefertiti」「Fall」などを提供し、緊密な相互作用と形式の柔軟化を推進。本作もその文脈に位置づけられる。

有名な演奏・録音

最も代表的なのはマイルス・デイヴィスのアルバム『Water Babies』収録のテイク。録音時の編成はトランペット、テナーサックス、ピアノ、ベース、ドラムのクインテットで、メンバーは前述のセカンド・クインテット期の面々として知られる。他アーティストによる商業録音の網羅的リストは情報不明だが、研究対象やリサイタルのレパートリーとして取り上げられる例は見られる。

現代における評価と影響

「Water Babies」は、ショーターの作曲美学—簡潔な主題、和声の曖昧性、空白の活用—を学ぶ好例として評価される。セッション定番曲ほどの頻度ではないものの、音大やワークショップでの分析題材として有用で、インタープレイ志向のアンサンブル練習にも適している。演奏者にとっては、音数を絞りつつ構造的なフレーズを紡ぐ力、ダイナミクスと間合いの設計力が問われる点が魅力となっている。

まとめ

ウェイン・ショーター作曲「Water Babies」は、セカンド・クインテット期の革新的言語を体現する一編。明確な歌詞や派手な主題ではなく、繊細な和声と会話的即興で魅せる楽曲であり、歴史的文脈と実践的学習価値を併せ持つ。資料性と演奏的挑戦が両立したジャズ曲として、今なお聴かれ、研究されている。