あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

Yearnin

  • 作曲: NELSON OLIVER E,STANTON FRANK,STANTON JOHN LOCKE
#スタンダードジャズ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

Yearnin - 楽譜サンプル

Yearnin|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Yearnin」は、作曲者にNELSON OLIVER E, STANTON FRANK, STANTON JOHN LOCKEがクレジットされるジャズ曲。もっとも広く知られるのはサックス奏者オリバー・ネルソンが率いた1961年の名盤「The Blues and the Abstract Truth」に収められたインストゥルメンタルで、歌詞は存在しない。クレジット各氏の具体的な役割分担は情報不明だが、作品自体はネルソンの作編曲センスを示す代表例として位置づけられている。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲はブルース由来の和声進行を軸に、内声の対位法と厚みのある管楽器ヴォイシングが印象的。主題は簡潔で余韻のあるフレーズで構成され、ソロではモーダルなスケール運用とブルーノートが交錯する。テンポは中庸、リズム・セクションは堅牢なスウィングを保ちつつダイナミクスを精妙にコントロールする。ネルソン流の洗練されたアレンジが、哀感と張り詰めた緊張感を同居させ、短い動機の反復と応答でドラマを積み上げる設計が聴きどころだ。

歴史的背景

1961年はインパルス! レーベル勃興期で、ハード・バップからモード、室内楽的アレンジへ語彙が拡張した時期。「Yearnin」はその只中で、コンボ規模に対位法的書法を持ち込み、ソロとアンサンブルの緊密な往還を提示した。アルバム全体の美学と同様、編曲と即興の均衡、クリアな録音が時代を画す要素となっている。初演年や出版情報の詳細は情報不明だが、ネルソン作品群の中で重要な位置を占める。

有名な演奏・録音

基準となる録音は、オリバー・ネルソンの「The Blues and the Abstract Truth」。艶のある管セクションと硬質なリズム隊が主題の陰影を鮮明に描き、楽曲の構造美を際立たせる。再発やリマスターも多く、音質面の改善によりヴォイシングの繊細さが一層浮かび上がる。他アーティストの著名な公式録音については情報不明だが、ネルソン作品のアレンジ言語は教育現場や小編成アンサンブルで参照されることがある。

現代における評価と影響

現在でも、ネルソンの書法—色彩的な和声、重層的ヴォイシング、ソロと合奏の接続—を学ぶ教材として価値が高い。華美に走らず構造で魅せる設計は、現代ジャズの小編成アレンジに通底する美学を先取りしたものと評される。ブルースの情感を抽象化して提示する手つきは、演奏者に音色・アタック・ダイナミクスの精密な管理を要求し、作編曲家に対してはテーマ展開とテクスチャの作り方に具体的な示唆を与えている。

まとめ

「Yearnin」は、哀切さと理知を併せ持つ設計で、ブルース・フィーリングとモダンな書法を結びつけた佳品である。作曲クレジットの詳細は情報不明ながら、1961年録音で確立した解釈が今日でも基準点となり、ジャズ・レパートリーの中で静かな存在感を放ち続ける。編曲の妙と即興の充実、その均衡の美しさを味わえる一曲だ。