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Yellow Fields

  • 作曲: WEBER EBERHARD
#スタンダードジャズ
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Yellow Fields - 楽譜サンプル

Yellow Fields|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Yellow Fields」はドイツのベーシスト/作曲家エバーハルト・ウェーバー(WEBER EBERHARD)によるインストゥルメンタル曲。1976年、ECMから発表された同名アルバムの表題曲で、端正で詩的な音響美をたたえるECMサウンドを代表する一作である。演奏メンバーはウェーバー(ベース)、チャーリー・マリアーノ(ソプラノサックス/シェーナイ)、ライナー・ブリューニングハウス(ピアノ/シンセサイザー)、ヨン・クリステンセン(ドラムス)。録音場所・正確な演奏時間は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

独特の長いサステインを持つウェーバーのエレクトリック・アップライト・ベースが、静かなオスティナートやペダルトーンで土台を形成。透明感のあるキーボードの和声が空間を彩り、ソプラノサックスは旋律線を大きくうねらせながらも、過度に煽らず抑制された表情で歌う。ドラムは密度より余白を重視し、微細なダイナミクスと色彩の変化で全体を呼吸させる。劇的な転調やテンポ変化に頼らず、音色・残響・層の重なりでフォームを描く点が本作の核にある。

歴史的背景

1970年代の欧州ジャズは、アメリカ起源のハードバップ語法から、室内楽的な響きや即興と作曲の緊密な結合へと拡張した時期であり、ECMはその潮流を先導したレーベルだった。ウェーバーは『The Colours of Chloë』(1974)で示した音響美学を、「Yellow Fields」でさらに洗練。民族楽器の用法やシンセサイザーのテクスチュアを、リズムのたゆたいと透明な録音美学の中に溶け込ませ、国境やジャンルを超える新しいアンサンブル像を提示した。

有名な演奏・録音

基準となるのは1976年ECMリリースのオリジナル録音で、現在もCD再発や主要ストリーミングで入手しやすい。ウェーバーの持続音、マリアーノの柔軟なフレージング、ブリューニングハウスの和声設計、クリステンセンの繊細な色付けが高次で結晶化している。オフィシャルな別録音や、映画・番組等での明確な使用実績については情報不明。

現代における評価と影響

歌うような低音とミニマルな推進力、そして音響空間の設計は、現代のベーシストや作編曲家に参照され続けている。環境音楽やポスト・クラシカルの文脈からも親和性が高く、静謐さと内省を重んじるプレイリストやラジオで取り上げられる機会が増加。技巧の誇示ではなく、配置と質感で物語を紡ぐ手法は、今日のジャズ以外の領域にとっても実践的なモデルとなっている。

まとめ

「Yellow Fields」は、旋律・和声・音色・残響の絶妙な均衡で世界観を立ち上げる、欧州ジャズ美学の象徴的楽曲である。派手な展開に依存せず、時間の流れとテクスチュアの変化で聴き手を導くその構築性は、録音から年月を経た現在も鮮度を保ち、創作と鑑賞の双方において示唆を与え続ける。