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Speak No Evil
- 作曲: SHORTER WAYNE

Speak No Evil - 楽譜サンプル
Speak No Evil|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Speak No Evilは、サックス奏者ウェイン・ショーター作曲のインストゥルメンタル曲。ブルーノートの同名アルバム(録音1964年、発売1966年)の表題曲として知られる。管2本とリズム隊のクインテット編成で初録音され、公式な歌詞は存在せず、ジャンルはジャズに分類される。ショーターが提示した独自の和声感と物語性の高い旋律は、のちにジャズ・スタンダードとして定着し、多くの演奏家がレパートリーに取り入れている。
音楽的特徴と演奏スタイル
陰影に富む主題と、機能和声に依存しないモーダル寄りの進行が核。明確なトニック感を曖昧にしつつ、ペダルや半音階的内声で緊張を生む設計が特徴だ。ミディアム・テンポ域でのソロは、動機の反復・変形と休符の配置によるドラマ構築が効果的。ピアノは第四度堆積やクラスターを含む開放的なボイシング、ベースはペダルと歩行の切替で地勢を描く。ドラムはシンコペーションとポリリズムで浮遊感を与え、全体として叙情と抽象が同居する演奏美学が求められる。
歴史的背景
本曲はショーターがブルーノートに残した中期代表作群の中核で、『Night Dreamer』『JuJu』に続く到達点として位置づけられる。録音はニュージャージー州のヴァン・ゲルダー・スタジオで行われ、レーベルの美学と録音哲学がサウンドを規定した。時期的にはマイルス・デイヴィス第二期クインテット在籍期と重なり、ポスト・バップへの移行、即興と作曲の統合、調性的重力の再編といった60年代ジャズの潮流を反映する。
有名な演奏・録音
初出はアルバム『Speak No Evil』。メンバーはWayne Shorter(ts), Freddie Hubbard(tp), Herbie Hancock(p), Ron Carter(b), Elvin Jones(ds)。この録音は曲の解釈の基準点として広く参照され、メロディの陰影や和声の曖昧さ、リズム・セクションの対話が理想形として語られる。オリジナル音源は再発を重ね、現在も入手・試聴しやすい。その他の著名な録音については情報不明。
現代における評価と影響
Speak No Evilはポスト・バップを象徴する名曲として、教育現場やセッションの定番曲集に収録される。和声の曖昧さと動機的明瞭さの両立は、作曲と即興の橋渡し教材として価値が高い。ピアノの現代的ボイシングやドラマーのタイム・レイヤリング、ホーンの語法設計など、実践的研究の対象として今も厚い支持を得ており、新世代の解釈が継続的に生まれている。
まとめ
ショーターの美学—抽象性と歌心—を凝縮したSpeak No Evilは、半世紀を超えた現在もスタンダードとして息づく。曖昧さを戦略とする設計が演奏者の創造力を刺激し、各パートに高度な聴取と対話を要求する。まずは初録音を丁寧に分析し、フォームの感触と和声の曖昧さを体得することが、解釈を深める最短距離となる。