I Dreamed a Dream 夢破れて
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
- 作曲: SCHONBERG CLAUDE MICHEL

I Dreamed a Dream 夢破れて - 楽譜サンプル
I Dreamed a Dream 夢破れて|歌詞の意味と歴史
基本情報
『I Dreamed a Dream(夢やぶれて)』は、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の劇中歌。作曲はClaude-Michel Schönberg(表記:SCHONBERG CLAUDE MICHEL)。フランス語原詞はAlain Boublil/Jean‑Marc Natel、英語詞はHerbert Kretzmer。初出は1980年のフランス版コンセプト・アルバムで、英語版は1985年ウェストエンド初演で広く知られるようになった。物語ではファンティーヌが職と尊厳を失った後に歌い、彼女の人生の崩壊と娘コゼットへの思いを凝縮する。邦題は「夢やぶれて」として定着し、単独曲としてもコンサートやオーディションで頻繁に取り上げられる。
歌詞のテーマと意味
若き日の希望と現実の落差、裏切りと貧困、社会的不正への慟哭が主題。ファンティーヌは、かつて信じた愛と未来が崩れ去った現在を見つめ、夢が砕けた理由を自身の過ちではなく過酷な境遇に見出す。歌詞は回想から告白へ、そして絶望へと段階的に焦点を絞り、母としてコゼットを守りたい願いと、己の尊厳を取り戻せない苦悩を対置することで、聞き手に強い共感を喚起する。比喩は素朴だが直接的で、静かな冒頭からクライマックスへ向けて感情を解放していく設計が、物語と密接に呼応している。
歴史的背景
原作はヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』(1862)。舞台は19世紀フランスの貧困と階級格差が横たわる社会で、本曲は労働搾取や女性の脆弱な立場を象徴的に映す場面に置かれる。1980年のフランス版を経て、1985年に英語版がロンドンで初演され“メガ・ミュージカル”の代表作として世界的成功を収めた。『夢やぶれて』は、作品全体の社会的テーマを個人の視点に落とし込む要のバラードとして、初演時から観客の記憶に強く残るナンバーとなった。
有名な演奏・映画での使用
舞台録音では、Patti LuPone(1985年ロンドン)、Ruthie Henshall(1995年コンプリート・シンフォニック)、Lea Salonga(2010年25周年コンサート)などが高く評価される。2009年にはSusan Boyleが英国のオーディション番組で披露し、世界的な話題に。映画『レ・ミゼラブル』(2012、監督トム・フーパー)ではAnne Hathawayが一連のロングテイクで歌唱し、役柄でアカデミー助演女優賞を受賞。以後、本曲は映画版を通じて新世代の観客にも浸透した。
現代における評価と影響
『夢やぶれて』は、ミュージカル・バラードの基準曲としてオーディションやコンクールで定番化。ポップス、クラシカル・クロスオーバー、ジャズ寄りの編曲まで広くカバーされ、キーやテンポの自由度も高い。キャラクターの内的独白を音楽的弧線で描く手法は、その後の作品にも影響を与え、ミュージカルを越えたスタンダードとして定着。ストリーミング時代でも、新録やライヴ映像を通じて継続的に発見され続けている。
まとめ
『夢やぶれて』は、個の絶望を普遍的共感へ昇華させたミュージカル屈指の名曲。簡潔な語彙と劇的な音楽設計が、ファンティーヌの物語を濃密に伝える。舞台・映画・テレビを横断して愛され、いまなお歌手の表現力を測る標準曲として生き続けている。