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They Say It's Wonderful

  • 作曲: BERLIN IRVING
#スタンダードジャズ
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They Say It's Wonderful - 楽譜サンプル

They Say It's Wonderful|楽曲の特徴と歴史

基本情報

They Say It's Wonderfulは、Irving Berlin(作曲・作詞)による1946年のミュージカル『アニーよ銃をとれ(Annie Get Your Gun)』の楽曲。ブロードウェイ初演でエセル・マーマン(Annie)とレイ・ミドルトン(Frank)が歌い上げ、作品内の恋愛を象徴するバラードとして観客の心をつかんだ。のちにブロードウェイを越えてポピュラー/ジャズのレパートリーに広まり、アメリカン・ソングブックを代表するスタンダードとして演奏され続けている。

音楽的特徴と演奏スタイル

形式は典型的な32小節のAABA。甘美で滑らかな旋律線が魅力で、語るようなフレージングが要となる。和声はトニック中心のダイアトニックを基調に、ii–V進行やセカンダリー・ドミナントが自然に現れ、ジャズではトライトーン・サブや代理和音でのリハーモナイズも定番。テンポはバラード〜ミディアム・バラードが一般的で、自由なルバートのイントロや、ヴォーカルとテナーサックスの対話的な編成がよく映える。歌詞は「恋は素晴らしい」と人づてに聞く主人公の気持ちを丁寧に綴り、繊細なダイナミクスとレガートが表現の鍵になる。

歴史的背景

第二次世界大戦直後のブロードウェイで、『アニーよ銃をとれ』は活気あるショーアップと親しみやすいメロディで成功を収めた。本曲は物語中で二人の関係が深まる場面を支えるラブ・バラードとして機能し、ステージでのドラマ性と単体の楽曲美が両立。Berlinの職人的ソングライティングは、劇場を離れても通用する構造と歌心を備え、結果としてポピュラー音楽とジャズの両界隈に受け継がれる標準曲となった。

有名な演奏・録音

初演でのエセル・マーマンとレイ・ミドルトンによる歌唱は歴史的意義が大きい。1946年にはBing Crosbyによる録音がヒットし、ポピュラー面での浸透を決定づけた。ジャズでは1963年のJohn Coltrane & Johnny Hartman盤が名演として広く認知され、テナーとバリトンの温かな音色で楽曲のロマンティシズムを極めている。以降、多くのシンガーやジャズ・ミュージシャンがレパートリーに取り入れ、スタンダードとしての地位を固めた。

現代における評価と影響

Today’sシーンでも、ヴォーカル・リサイタルや小編成ジャズのバラード枠で頻繁に取り上げられる。旋律の覚えやすさと柔軟なハーモニー運用は教育現場でも扱いやすく、ソロ作成やコード・ヴォイシングの教材としても有用。ブロードウェイ由来の豊かな歌心と、ジャズ解釈の余白を併せ持つため、世代やジャンルを超えて愛好家を広げ続けている。

まとめ

They Say It's Wonderfulは、劇場発の名旋律がジャズ・スタンダードへと昇華した好例。AABAの堅牢な構造、歌詞が示すロマン、そして多彩なアレンジに耐える器の大きさが、録音史と演奏現場の両面で価値を保ち続ける理由だ。初演の歴史から名演群、現在の演奏実践に至るまで、その魅力は普遍的である。