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Without A Song

  • 作曲: YOUMANS VINCENT
#スイング#洋楽ポップス#スタンダードジャズ#カーペンターズ
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Without A Song - 楽譜サンプル

Without A Song|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Without A Songは、作曲家ヴィンセント・ユーマンスが手がけたスタンダード・ナンバーで、作詞はBilly RoseとEdward Eliscu。初出は1929年のブロードウェイ・ミュージカル「Great Day」。舞台そのものは短命に終わったものの、この曲は独立した人気曲として歌い継がれ、後年のポピュラー、ジャズ双方のレパートリーに定着した。歌詞は“歌(音楽)が人生を支える”という普遍的なテーマを掲げ、希望と昂揚感を伴うメロディと結びついて広く親しまれている。

音楽的特徴と演奏スタイル

歌心に満ちた伸びやかな旋律線と、前向きな高揚感を生むハーモニー進行が特徴。実演ではミディアム〜アップテンポのスウィングで明るく押し出す解釈から、抒情を強調したバラードまで幅広い。ジャズ現場では32小節のAABA形式として扱われることが多く、A部の力強い上昇感と、B部(ブリッジ)の転調感がソロ構築の起伏を生む。歌唱ではダイナミクスの対比とフレーズのレガート処理が要点。インストでは主題提示後のモチーフ展開やリズムの推進力が聴きどころとなる。

歴史的背景

1929年はブロードウェイの黄金期と世界大恐慌のはざまにあり、エンタテインメントへの期待が高まっていた時期でもある。「Great Day」は興行面で恵まれなかったが、Without A Songは単独で人気を獲得し、録音時代の発展とも重なって広範に広がった。曲想の明朗さと励ましのメッセージは時代の不安に対する希望の歌として響き、ポピュラー歌手とジャズ・ミュージシャンの双方に受け入れられる素地を作った。

有名な演奏・録音

ポピュラー分野ではFrank Sinatra、Mario Lanza、Perry Comoらの名唱で広く知られる。ジャズではテナーサックスの巨匠Sonny Rollinsが「The Bridge」(1962)で印象的な解釈を示し、のちに「Without a Song: The 9/11 Concert」(2001)でも取り上げ、時代を超える生命力を証明した。ほか多くの歌手・奏者がレパートリーに加えており、ビッグバンド、コンボ、ヴォーカル・セットなど編成を問わず取り上げられることが多い。

現代における評価と影響

Without A Songは、ブロードウェイ由来の名曲がジャズ・スタンダードへ定着していく典型例として評価される。歌詞の普遍性とメロディの懐の深さは、年代・スタイルを問わず再解釈を可能にし、教育現場やスタンダード集でも参照される定番曲となった。ライブでは会場の空気を一気に明るくする選曲として機能し、アドリブの導入曲としても扱いやすい。録音史に残る多彩なアレンジは、今なお新たな演奏解釈の出発点を提供している。

まとめ

ミュージカル発の名旋律と希望に満ちたメッセージで、Without A Songは時代を超えて歌われ続けてきた。ジャズの即興性にも適合する形式とハーモニーを備え、ヴォーカル/インストの双方で映える汎用性が魅力。定番曲としての歴史的重みと、現在進行形の表現可能性を併せ持つ、スタンダード入門にも最適な一曲である。