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Midnight Sun
- 作曲: HAMPTON LIONEL,BURKE SONNY

Midnight Sun - 楽譜サンプル
Midnight Sun|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Midnight Sunは、ヴィブラフォン奏者Lionel Hamptonと編曲家Sonny Burkeによる共作。もとはインストゥルメンタルとして知られ、その後に作詞家Johnny Mercerが歌詞を付けたことで、器楽・歌もの双方で愛奏されるジャズ・スタンダードとなった。発表年は情報不明だが、戦後のモダン・ジャズ台頭期を象徴する楽曲の一つとして位置づけられている。
音楽的特徴と演奏スタイル
温かい光沢を帯びたメロディと、半音階的に移ろう和声進行が特徴。テンポはバラードからミディアム・スイングまで幅広く、ヴィブラフォンやサックスの歌心を生かすアプローチが定番である。シンガーはイントロで自由度の高いルバートを取り入れ、コーラスではリリカルなフレージングで意味を立ち上げる。ハーモニーは拡張テンションが多く、上質なボイシングとダイナミクス設計が要となる。
歴史的背景
ビッグバンドから小編成へと重心が移る過渡期、Hampton楽団のレパートリーとして注目を集めた。のちにJohnny Mercerがラジオでこの曲を聴き、強いインスピレーションから歌詞を付与した逸話は広く知られる。これにより、同曲は器楽名曲という位置づけに加えて、ボーカル・スタンダードとしての生命力も獲得し、以降シーン横断的に演奏され続けることになった。
有名な演奏・録音
原曲の柱となるのはLionel Hampton & His Orchestraの演奏。歌ものではElla FitzgeraldやSarah Vaughanによる解釈が定評を得ており、品位あるフレージングと音域運用で曲の陰影を際立たせた。器楽ではOscar Peterson TrioがHampton作品集で取り上げ、透徹したピアノ・トリオの語法で和声の美を掘り下げている。他にも多数のジャズミュージシャンがレパートリーに採用。
現代における評価と影響
Midnight Sunは教育現場でも頻出し、バラード表現、テンション処理、メロディ解釈の実例として重視される。セッション現場では夜想的なムードを作る定番曲として機能し、配信時代においても新録・再解釈が継続。ヴィブラフォンのレパートリー拡充に寄与した功績も大きく、器楽曲と歌ものの橋渡しを果たした稀有なスタンダードとして評価が揺るがない。
まとめ
インスト起源の洗練された旋律美に、後年の歌詞が重なって二重の魅力を得たMidnight Sun。演奏者には高度な音色コントロールと和声感、歌手には語りの技術を要求する。名演の蓄積がその価値を裏打ちし、今なおステージや録音で息長く選ばれ続ける、時代を超えるジャズ・スタンダードである。