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Stormy Weather

  • 作曲: ARLEN HAROLD, KOEHLER TED
#スイング#スタンダードジャズ
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Stormy Weather - 楽譜サンプル

Stormy Weather|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Stormy Weather」はHarold Arlen作曲、Ted Koehler作詞のバラードで、1933年ニューヨークのコットン・クラブでエセル・ウォーターズにより初演。失恋の孤独を荒天にたとえる歌詞と、深い哀感を湛えた旋律で広く知られ、今日ではヴォーカル曲の定番=ジャズ・スタンダードとして定着している。

音楽的特徴と演奏スタイル

形式は典型的な32小節AABA。テンポはスローからミディアム・スローが主流で、冒頭に自由なルバートのイントロを置く解釈も多い。ハーモニーはブルース由来の色彩と豊富なII–V進行が交錯し、旋律は長いレガートとため息のような下行句が印象的。小編成のピアノ・トリオからストリングスを伴うビッグ・バンドまで、編成を問わず成立する柔軟さも魅力だ。

歴史的背景

本曲は大恐慌期のナイトクラブ・レビュー「Cotton Club Parade」用に書かれ、アフリカ系アメリカ人アーティストの舞台表現とともに広まった。1943年の映画『Stormy Weather』ではレナ・ホーンが象徴的な歌唱を披露し、作品名そのものが曲の存在感を決定づけた。ショウ・ビジネスの現場で磨かれた楽曲は、戦後のポピュラー/ジャズ双方のレパートリーに吸収されていく。

有名な演奏・録音

初演者エセル・ウォーターズの1933年録音は史的資料として重要。レナ・ホーンは1943年の映画版を含む複数の名唱を残し、ビリー・ホリデイ(1952年)、フランク・シナトラ(1959年)、エラ・フィッツジェラルド(1961年『ハロルド・アーレン・ソングブック』)など、時代ごとに解釈が更新された。いずれもテンポや和声彩色に独自の工夫が見られる。

現代における評価と影響

「Stormy Weather」はトーチ・ソングの典型として、ジャズ教育やセッションの必修曲に数えられる。感情表現と音程コントロールの両立を求めるため、ヴォーカリストの力量を測る指標ともなり、編曲家にとっては再ハーモナイズやテンポ設計の好題材。メディアやコンサートでの再演も絶えず、世代を超えて受容が続く。

まとめ

荒天というメタファーで心の陰影を描く本曲は、シンプルな形式に豊かな表情を宿す稀有なスタンダードだ。初演の舞台性、映画による普及、数々の名唱が重なり、現在も新たな解釈を呼び込む。歌で聴くもよし、器楽で味わうもよし——普遍性と個性を兼ね備えた一曲である。