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One Note Samba(Samba de Uma Nota So)

  • 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS, MENDONCA NEWTON FERREIRA DE
#ボサノバ#スタンダードジャズ
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One Note Samba(Samba de Uma Nota So) - 楽譜サンプル

One Note Samba(Samba de Uma Nota So)|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Antonio Carlos Jobim(作曲)とNewton Mendonça(作詞)の共作によるボサノヴァ曲。原題はポルトガル語で“Samba de Uma Nota Só”、英題が“One Note Samba”。タイトルどおり「一つの音」をテーマに据えた独創的な設計で、ジャズ界でも標準曲として広く演奏される。ボサノヴァの繊細な美学と、ジャズの和声語法・即興性が自然に交差する代表曲の一つであり、セッションや音楽教育の現場でも定番。初出年は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

Aセクションでは旋律がほぼ単一音で構成され、コード進行だけが豊かに推移する。循環するII–V進行や半音関係の動きが緊張と解放を生み、ミニマルな動機が和声によって色彩を変える仕掛けが核心だ。Bセクションでは旋律の音域が広がり、フレーズの方向性が開放される。典型的な演奏は中庸のサンバ・グルーヴで、ナイロン弦ギターのシンコペーション、軽やかなドラム/パーカッション、ピアノの分散和音が要。ジャズではスキャットやリハーモナイズ、倍テンのスウィングに切り替える展開も定番で、ソロはモチーフ・デベロップメントとリズムの押し引きが肝となる。

歴史的背景

本作は1950年代末〜60年代初頭にリオで花開いたボサノヴァ潮流の中心人物ジョビンと、盟友メンドンサのコンビから生まれた。両者は“Desafinado”や“Meditation”などでも知られ、都会的で内省的な感性を世界へ広めた立役者である。ボサノヴァが米国ジャズ・シーンに受容されると、本作もセッション・レパートリーとして定着し、クラブやコンサートで頻繁に取り上げられる国際的スタンダードへと発展した。

有名な演奏・録音

初期の代表的録音の一つに、ジョアン・ジルベルトによるポルトガル語歌唱のヴァージョンがある。米国ではスタン・ゲッツとチャーリー・バードのアルバム“Jazz Samba”(1962)に収録され、ボサノヴァ旋風の拡大に寄与した。ヴォーカル・ジャズではエラ・フィッツジェラルドが取り上げ、スキャットを交えた解釈で広く親しまれている。作曲者ジョビン自身のインストゥルメンタル演奏も録音として残り、ピアノやギター、ビッグバンド編成など多様なアプローチで再演が続く。

現代における評価と影響

今日でも代表的なスタンダード譜集に収載され、音楽大学やワークショップの教材として扱われることが多い。単一音モチーフ、和声の色彩変化、サンバ・グルーヴという三要素を同時に学べるため、リズム感・和声理解・即興構築力の養成に適している。原詞(ポルトガル語)と英訳詞の両方で歌われ、器楽曲としても映える汎用性が評価されるなど、時代や地域を超えて継続的な支持を得ている。

まとめ

“一音”というミニマルなアイデアを、豊穣なハーモニーとサンバの躍動で普遍的な魅力へ高めた名曲。ボサノヴァの美学を体現しながら、ジャズの即興にも応える設計によって、学習曲としても演奏曲としても価値が揺るがない。入門から上級まで、表現の深掘りに耐えるスタンダードである。