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Tico Tico
- 作曲: ABREU ZEQUINHA DE

Tico Tico - 楽譜サンプル
Tico Tico|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Tico Tico」(原題「Tico-Tico no Fubá」)は、ブラジルの作曲家ゼキーニャ・ジ・アブレーウによるショーロの代表曲。もともとは器楽曲として書かれ、世界各地で親しまれるスタンダードとなった。後年ポルトガル語や英語の歌詞版も作られたが、原曲の性格は器楽中心である。作詞者や初演者、初出版年は情報不明とし、ここでは楽曲自体の特徴と歴史に焦点を当てる。
音楽的特徴と演奏スタイル
軽快な2拍子に乗る細かな分割のメロディと切れの良いシンコペーションが核。AABBACCA型のセクション構成が採られることが多く、転調や半音階句、アルペジオの駆け上がりなど、演奏技巧を際立たせる書法が並ぶ。テンポは速めだが、ショーロ特有の“泣き”と洒脱さを併せ持ち、リズム隊(カヴァキーニョ、ギター、パンデイロ等)と旋律楽器(フルート、マンドリン、クラリネットなど)の対話が魅力である。
歴史的背景
20世紀初頭のリオ・デ・ジャネイロで隆盛したショーロ文化の文脈で生まれた本作は、ダンス音楽とサロン音楽の要素を併せ持つ。都市の音楽家たちが即興と編曲を重ねる中でレパートリーに定着し、のちに録音・ラジオ・映画を通じて国際的に広まった。作曲の具体的経緯や初演会場は情報不明だが、地域の実演現場を起点に広がったことは確かである。
有名な演奏・録音
本曲は多様な楽器で録音され、特にオルガンやピアノ、アコーディオンの名演が知られる。歌手カルメン・ミランダの舞台・映画での取り上げや、オルガン奏者エセル・スミスの華やかな演奏は、世界的な知名度を押し上げた例として有名である。ショーロ楽団の古典的な解釈から、ジャズ・コンボの高速アドリブ、ソロ・ギター編曲まで、数多くのヴァージョンが存在する。
現代における評価と影響
現在もコンクールや音楽教育の課題曲、セッションの定番として頻繁に演奏される。明快な主題と機能的な和声進行、リズムの推進力が、アレンジの自由度を高め、多ジャンル横断の素材として重宝されるためだ。ビッグバンド用スコアや室内楽編成、独奏向けヴィルトゥオーゾ・アレンジまで出版が広く、ポピュラー音楽とクラシックの橋渡しとなるレパートリーの一つに数えられている。
まとめ
「Tico Tico」は、簡潔な動機から巧妙な変化と推進力を生み出すショーロの精髄を体現する楽曲である。器楽主体でありながら、歌唱版や映画での普及を経て国境を越えたスタンダードとなった。演奏者には俊敏なテクニックとリズム感、アンサンブルの呼吸が求められ、その挑戦性こそが不朽の魅力を支えている。