When The Saints Go Marching In (聖者の行進)
- 作曲: PD

When The Saints Go Marching In (聖者の行進) - 楽譜サンプル
When The Saints Go Marching In (聖者の行進)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『When The Saints Go Marching In(聖者の行進)』は、米国のゴスペル由来のトラディショナル曲。著作権の保護期間を過ぎたPDとして広く扱われ、歌詞付きでも器楽でも演奏される。行進曲由来のシンプルな構造と覚えやすい旋律で、入門者からプロまで親しまれている。英語題は一般に略して“When the Saints”とも呼ばれ、日本では学校教材や地域イベントの定番曲としても浸透している。
音楽的特徴と演奏スタイル
メジャー・キーに基づくダイアトニックな旋律と、I–IV–V中心の和声進行が核。コール&レスポンスが映えるフレーズ構成で、ヴォーカルとホーンの掛け合い、行進的な二拍子フィールからスウィングの四拍子へ発展させるアレンジが定番である。ニューオーリンズのブラスバンドでは、葬列などで抑制的に始め、後半は明るくアップテンポに転じる演奏が行われることも多い。ソロはテーマのモチーフを用い、コーラスごとに強度を増していく設計が相性良い。
歴史的背景
起源は19〜20世紀初頭のアフリカ系アメリカ人スピリチュアルに遡るとされるが、正確な初出年や作詞者は情報不明。教会音楽として歌われたのち、ニューオーリンズのバンド編成に取り入れられ、1930年代にはジャズ・レパートリーとして広く定着した。街のブラスバンド文化やパレードの伝統と結びつき、祝祭と信仰の両面を象徴する曲となった。世俗の場でも受容され、宗教曲でありながら幅広い観客に開かれていった。
有名な演奏・録音
決定的な普及に貢献したのは、ルイ・アームストロングによる1938年の録音とされる。以降、ニューオーリンズ系の名門であるプレザヴェーション・ホール・ジャズ・バンドをはじめ、無数のバンドがレパートリーに取り入れてきた。合唱やゴスペル・クワイア、スクールバンド、吹奏楽でも頻繁に取り上げられ、編成や難易度に応じた数多くのアレンジが存在する。代表的演奏者の網羅的な一覧は情報不明だが、歴史的録音の蓄積は非常に厚い。
現代における評価と影響
今日では世界中のジャズ・セッションの常連曲であり、ブルースやトニック/サブドミナント/ドミナントの基礎感覚、コール&レスポンス即興の実践に最適な教材とも評価される。パブリックドメインで扱いやすいことから、地域のパレードやスポーツ応援、学校行事でも定番化。宗教曲に根ざしつつも、世俗的な祝祭の場で共有可能な“開かれた標準曲”として位置づけられている。初心者の初舞台からプロのアンコールまで用途が広い。
まとめ
ゴスペルに発し、ジャズで花開いた『聖者の行進』は、簡潔な旋律と普遍的なメッセージ性(救いと希望、来るべき日への待望)ゆえに世代と文化を超えて演奏され続けている。シンプルな枠組みは自由なアドリブを受け止め、行進曲からスウィングへと高揚する歓喜の流れをつくる。入門にもステージにも映える、時代を超えたスタンダードであり、今後も生演奏の現場で鳴り続けるだろう。