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Trav'lin' Light

  • 作曲: MUNDY JIM,YOUNG TRUMMIE
#スタンダードジャズ
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Trav'lin' Light - 楽譜サンプル

Trav'lin' Light|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Trav'lin' Light は、作曲ジミー・マンディとトラミー・ヤング、作詞ジョニー・マーサーによるジャズ・バラード。1942年にビリー・ホリデイがポール・ホワイトマン楽団と録音し、当時のHarlem Hit Paradeで首位を獲得したことで広く知られた。ヴォーカル曲だが、インスト演奏も多い。一般にゆったりしたテンポで演奏され、しっとりとしたメロディが魅力。正式な初演日や原曲の調性は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

旋律は跳躍よりも滑らかな順次進行が中心で、内省的な歌詞と相まって余白の美しさを生む。序奏でのルバート、主部でのレイドバックしたタイム感、ブレスの置き方が表現の要。和声はスタンダード期の機能和声を基盤にし、トニックからサブドミナント、セカンダリードミナントを経て穏やかに回帰する構成が一般的。語り口を重視する歌唱、控えめなブラシ、温かなホーン・パッドが好相性。

歴史的背景

本曲が世に出た1942年前後はビッグバンド黄金期の終盤。ダンス音楽の求心力が強い一方で、繊細なバラードがラジオやレコードで親しまれた。ホリデイの録音は「Lady Day」名義でも流通し、彼女特有の後ノリと母音処理が楽曲の決定版として記憶される。作曲者のマンディは名アレンジャー、ヤングはトロンボーン奏者として知られ、クラブ現場の感覚が作品に息づいた。

有名な演奏・録音

代表はビリー・ホリデイ(1942)。その後も多数の歌手が取り上げ、とりわけエラ・フィッツジェラルドが「Johnny Mercer Song Book」で取り上げた解釈は、明瞭な発音と均整のとれたフレージングで定評がある。スモール・コンボのインスト版も多く、テナー・サックスやフリューゲルホーンによる歌心あるソロが定番。網羅的なディスコグラフィーは情報不明。

現代における評価と影響

Trav'lin' Light は、ジャズ・ヴォーカルの教材的レパートリーとして位置づけられ、歌詞の語感と間合い、ビートの「後ろ寄り」を体得するのに適した曲として重用される。クラブやホテル・ラウンジでも選曲されやすく、夜想的なムードづくりに機能。映画やドラマでの顕著な使用例は情報不明だが、プレイリスト文化の中で「静かな夜のスタンダード」として息長く愛聴されている。

まとめ

感傷に沈み過ぎず、身軽に前へ進むという含意を持つ本曲は、軽やかな足取りとほのかな翳りを同居させた希有なバラード。ホリデイ版の人肌の温度、エラ版の端正さという対照が、解釈の自由度を示す。シンガーは言葉の響きを、プレイヤーは休符と音価を磨くことで、シンプルな素材に深みを与えられる一曲だ。