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I'm Not In Love
- 作曲: GOULDMAN GRAHAM KEITH, STEWART ERIC MICHAEL

I'm Not In Love - 楽譜サンプル
I'm Not In Love|歌詞の意味と歴史
基本情報
「I'm Not In Love」は、10ccが1975年に発表した名曲。作曲者はGraham GouldmanとEric Stewartで、アルバム『The Original Soundtrack』からのシングルとして大ヒットした。柔らかなエレクトリック・ピアノと、息の長いコーラス・パッドが溶け合うサウンドは、ポップ/ソフトロックの枠を越えた独自性を示す。全英シングルチャートで1位、米国でもトップ10入りを果たし、バンド最大級の成功作として知られる。
歌詞のテーマと意味
タイトル通り“恋ではない”と語る一人称の独白が核だが、否定を重ねるほどに相手への執着と感情の深さが露わになる逆説的な構図が特徴。強がりや自己防衛としての距離の取り方、関係性を曖昧に保ちたい心理、愛情表現への不器用さが繊細に描かれる。断定や誇張は避け、淡々とした言葉運びで内面の揺れを浮かび上がらせるため、聴き手は行間から真意を読み取ることになる。直接的なロマンティシズムに拠らず、否定のレトリックで親密さを描く点が普遍的な共感を呼び、時代や文化を越えて聴かれ続けている。
歴史的背景
制作はストロベリー・スタジオで行われ、メンバーの声を膨大に多重録音し、フェーダーで和音を“演奏”するコーラス・パッドを構築。ドラムを極力排したミニマルな編成と、空間を活かしたミキシングが、夢見心地の浮遊感を生む。初期案のラテン/ボサノヴァ風アレンジは破棄され、現在知られるアンビエント寄りの質感へ再構築された。スタジオ受付スタッフによる囁き声のセリフも印象的なテクスチャーとして機能し、実験的でありながらポップに昇華した点が当時革新的と評価された。
有名な演奏・映画での使用
オリジナルの10cc版が最も広く知られるが、ライブ再演や各種ベスト盤でも定番化している。映画では『Guardians of the Galaxy』(2014)で使用され、世代を超えて新たなリスナーに届いたことでも話題となった。その他の具体的な映像作品・カバーの網羅的リストは情報不明。
現代における評価と影響
本作の多重ボイスと残響設計は、ドリームポップやシンセポップ、バラード系のプロダクションに先駆的な示唆を与えたとされる。感情表現を過度に誇張しない語り口や、否定形で親密さを描く手法は、後続のポップ・ソングライティングにも影響。プレイリスト時代においても“静かな強度”を持つ楽曲としてストリーミングで聴かれ続け、リスニング文脈の変化にも適応している。
まとめ
「I'm Not In Love」は、否定の語りと革新的なスタジオワークを融合させたポップ史の金字塔。私的な感情の機微を、合唱のような音像とミニマルな編成で包み込み、時代を超える魅力を獲得した。制作背景と歌詞の構造を知ることで、静謐なサウンドの奥に潜む感情の振幅がいっそう鮮明に感じられるだろう。