宇多田ヒカル
First Love
- 作曲: 宇多田ヒカル

First Love - 楽譜サンプル
First Love|歌詞の意味と歴史
基本情報
宇多田ヒカルが作詞・作曲したバラード。1999年発表のアルバム『First Love』収録で、TBS系ドラマ『魔女の条件』主題歌として広く知られる。英語と日本語が交差するメロディと言葉運び、R&Bの質感をまとったミディアムスローの構成が特徴で、静かな起伏の中に大きな感情の波を宿す。繊細なボーカルと引き算のアレンジが印象的だ。
歌詞のテーマと意味
別れを受け入れながらも初恋の記憶が消えない心情を、余白の多い言い回しで描く。過去への愛着と現在の前進という二項が同居し、時間が感情を上書きできない瞬間を静かに提示。英語と日本語を対比的に配し、親密な独白と普遍的メッセージを同時に届ける設計が秀逸。具体描写を絞ることで、聴き手各自の記憶に結び付く余地を残している。
歴史的背景
デビュー直後の1998〜1999年、日本のポップ市場はCD全盛とドラマ主題歌の強い連動が続く時代。R&B/ソウル要素をJ-POPに融合した宇多田のサウンドは革新性を帯び、『First Love』はその到達点のひとつとして機能した。派手さより質感と余韻を重視するプロダクションが、同時代のバラード観に新たな基準を提示したことも重要である。
有名な演奏・映画での使用
主題歌となったTBS系ドラマ『魔女の条件』(1999)で社会的認知を獲得。のちにNetflixシリーズ『First Love 初恋』(2022)でも重要なモチーフとして扱われ、改めて注目を集めた。ライブでは長年の定番曲として歌われ、各種メディアやアーティストによるカバーも多数存在。作品の広がりが曲自体の普遍性を裏づけている。
現代における評価と影響
配信主流の現在も長期的に聴取され、世代を超えて親しまれる。英日混淆のリリック運用、息遣いを活かす録音美学、ミニマルなコード進行と旋律の伸びやかさは、後続のJ-POP/R&Bバラードに影響を与えた。カラオケでも定番として定着し、個人の記憶と強く結びつく“私的な国民曲”として位置づけられている。
まとめ
『First Love』は、過剰に語らず余韻で情景を立ち上げる歌詞と、R&B由来のしなやかな質感が核となる名曲。ドラマ主題歌で広く浸透し、のちの作品群や映像作品を通じて価値を更新し続けてきた。初恋の痛みと輝きという普遍テーマを、時代を越えて鮮やかに呼び起こす一曲である。