After You've Gone
- 作曲: CREAMER HENRY

After You've Gone - 楽譜サンプル
After You've Gone|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「After You’ve Gone」は、1918年に発表されたアメリカのポピュラーソングで、やがてジャズ・スタンダードとして定着した楽曲。一般的にはTurner Layton(作曲)とHenry Creamer(作詞)のコンビ作として知られる。初期のヒットには歌手Marion Harrisの録音があり、その後も数多くの歌手・ジャズ奏者に取り上げられた。情感豊かな旋律と、別れの後に訪れる後悔を予告する歌詞世界が核にあり、歌物としても器楽曲としても成立する柔軟性の高さが魅力である。
音楽的特徴と演奏スタイル
32小節型(AABA系)に基づく明快な構成が一般的で、メロディはため息のような下行句と跳躍を交えたフレーズが印象的。和声は循環進行やセカンダリー・ドミナントを要所に配し、スウィング感のあるウォーキング・ベースや、トゥー・ビートの躍動とも相性がよい。テンポはミディアムからアップまで幅広く、ヴォーカルではレガートとダイナミクスの対比、器楽演奏ではコール&レスポンスやコーラスごとの展開で盛り上げるのが定番。アドリブは主題のモチーフを引用しながらガイドトーンをなぞると効果的で、終結部ではタグやフェルマータで余韻を作るアレンジも多い。
歴史的背景
本曲はティン・パン・アレー期のポピュラーソングに端を発し、第一次世界大戦期のアメリカで広く親しまれた。のちにニューオーリンズ系の伝統ジャズ、スウィング時代のコンボ、ビッグバンドのレパートリーへと拡張し、ダンスホールからコンサートまで多様な場で演奏されるようになる。舞台やヴォードヴィルの流れを汲む楽曲の語り口と、ジャズ的な即興に耐える器の大きさが、時代を超えた普遍性をもたらした。
有名な演奏・録音
初期の代表例としてMarion Harrisの録音が知られ、続いてBessie Smithがブルース色の濃い名唱を残した。ジャズではLouis Armstrong、Benny Goodmanトリオ/カルテット、Django Reinhardt&Stéphane Grappelli、Sidney Bechet、Fats Wallerなどが個性豊かな名演を披露。後年も多くのヴォーカリストやスウィング〜トラッド系のバンドに取り上げられ、録音は現在まで枚挙にいとまがない。具体的な収録年やアルバムは版によって多岐にわたるため、詳細は情報不明。
現代における評価と影響
ジャム・セッションの定番として今も頻繁に演奏され、ダンサー向けのスウィング・イベントでも重宝される。教育現場では、歌伴と器楽の両面から学べる教材として扱われることが多く、スタンダードを通じてフォーム理解や和声感、スウィング・フィールを養う題材として定評がある。録音・編曲の蓄積が膨大なため、解釈の幅が広く、世代を超えて演奏解釈が更新され続けている。
まとめ
「After You’ve Gone」は、哀感ある旋律と堅牢なフォームを兼ね備え、歌とインスト双方で光る不朽のスタンダード。歴史に根ざしつつ、新たな解釈を呼び込む開放性が、現在まで愛奏される最大の理由である。