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Satin Doll
- 作曲: ELLINGTON DUKE, STRAYHORN BILLY

Satin Doll - 楽譜サンプル
Satin Doll|楽曲の特徴と歴史
基本情報
曲名『Satin Doll』(サテン・ドール)は、デューク・エリントンとビリー・ストレイホーン作曲、1953年発表のジャズ・スタンダードである。歌詞は後年ジョニー・マーサーが付け、器楽版とヴォーカル版の双方で広く親しまれてきた。エリントン楽団のコンサートでは終演テーマとして長く使われ、名刺代わりのナンバーとなった。
音楽的特徴と演奏スタイル
形式は32小節のAABA。A部は連鎖するII–V進行が滑らかに循環し、B部では転調感を伴う展開でコントラストを作る。クロマチックなターンアラウンドや代理和音の余地が大きく、アドリブではガイドトーンの連結とシンコペーションの扱いが要点となる。テンポはミディアム・スウィングが定番だが、バラードやボサノヴァ解釈もよく行われる。ピアノのコンピングやサックス・セクションのリフが映え、ビッグバンドでも小編成でも機能する。
歴史的背景
1950年代前半、エリントンはダンスホールとコンサートの両現場で機能するレパートリーを求めていた。本曲はその要請に応える形で、ストレイホーンの洗練された作曲術とエリントンの色彩的オーケストレーションが結実した例である。ラジオ中継や全米ツアーでの頻繁な演奏により知名度を高め、短期間で標準曲として定着した。
有名な演奏・録音
基準となるのはデューク・エリントン楽団の各年代のライブ/スタジオ音源。ヴォーカルではエラ・フィッツジェラルドの歌唱がよく知られ、ビッグバンドではカウント・ベイシー楽団のスウィング感が魅力的だ。器楽の名演としてはオスカー・ピーターソンのトリオ、ギターではウェス・モンゴメリーらの解釈が挙げられる。いずれもハーモニー処理とグルーヴの両立に光る名演である。
現代における評価と影響
現在もセッションの常用曲として演奏され、ジャズ教育ではAABA形式やII–V連鎖の教材として扱われる。和声語彙が豊富である一方、親しみやすい旋律を備えるため、初学者から上級者まで発展的に取り組める。ステージ構成上もオープナーからクロージングまで配置しやすく、実用性の高いレパートリーである。
まとめ
『Satin Doll』は、洗練と大衆性を兼ね備えた20世紀ジャズの代表曲。歌でも器楽でも映え、編成やテンポを自在に変えられる柔軟性が魅力だ。ハーモニー運用とスウィングの快感を同時に味わえる本曲は、いまなおリスナーと演奏家の双方に学びと発見をもたらし続けている。