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All God's Chillun Got Rhythm
- 作曲: KAPER BRONISLAW, JURMANN WALTER

All God's Chillun Got Rhythm - 楽譜サンプル
All God's Chillun Got Rhythm|楽曲の特徴と歴史
基本情報
All God's Chillun Got Rhythmは、作曲ブロニスワフ・カペル(Bronislaw Kaper)とウォルター・ユルマン(Walter Jurmann)による1937年の作品。作詞はGus Kahn。MGM映画『A Day at the Races(マルクス兄弟)』で初披露され、のちにジャズ・スタンダードとして定着した。原詞は英語、拍子はスイングの4/4が一般的。初演の編成や調性・曲尺は情報不明だが、映画内では歌とダンスを中心に展開するナンバーとして用いられた。
音楽的特徴と演奏スタイル
軽快なアップテンポのスイング感と、明快なモチーフの反復が特徴。メロディはコール&レスポンス的な構造を持ち、即興への導入が自然で、管楽器セクションから小編成コンボまで幅広い編成に適する。機能和声にもとづく推進力あるコード進行は、倍テンポの駆動や4ビートのウォーキング・ベースと好相性。ジプシー・ジャズでは“ラ・ポンプ”のストロークで疾走感を強調し、モダン寄りの解釈ではシンコペーションの細かな配置やリズムの置き方で個性が出る。エンディングはヘッドアウトやフェルマータで締める演奏が通例。
歴史的背景
本曲は1937年公開の『A Day at the Races』で紹介され、当時のハリウッドにおけるスイング・ブームを象徴する一曲となった。作曲者のカペルとユルマンは欧州出身で、1930年代にハリウッドで活躍した映画音楽作家としても知られる。作詞のGus Kahnはティン・パン・アレーを代表するヒットメーカー。映画内の大規模な歌とダンスのシークエンスは、当時のポピュラー文化とジャズ・ダンスの結節点を示し、ホワイトィーズ・リンディ・ホッパーズなどの名ダンサーの存在感も広く知らしめた。表現や描写の受け止め方は今日では議論の対象となることもある。
有名な演奏・録音
初出の映画版での歌唱はIvie Andersonによるものとして広く知られる。器楽面では、Django ReinhardtとQuintette du Hot Club de Franceが取り上げた高速スイングの名演が特筆的で、以後ジプシー・ジャズ系の重要レパートリーとして定着した。ほかにも多くのジャズ・ボーカリスト、コンボ、ビッグバンドが録音を残しているが、網羅的なディスコグラフィは情報不明。
現代における評価と影響
現在もジャズ・クラブやジャム・セッション、スイング・ダンスの現場で頻繁に演奏される。アップテンポで明快なリフ構造は、アドリブの入門から高度な技量の誇示まで幅広く対応し、教育現場でもリズム・タイム感の練習曲として重宝される。映画発のスタンダードとして、スクリーン由来の曲がステージ・レパートリーに移行する典型例を示し、ジプシー・ジャズとアメリカン・スイング双方のコミュニティで共通言語として機能している。
まとめ
映画生まれのスイング・ナンバーとして出発し、ジャズ・スタンダードへと定着した本曲は、軽快なリズムと親しみやすい旋律、即興に適した進行で今日も演奏機会が多い。歴史的文脈を踏まえつつ、ステージやダンス・フロアで生き続ける一曲として、時代とジャンルを横断する魅力を保ち続けている。