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So What
- 作曲: DAVIS MILES

So What - 楽譜サンプル
So What|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「So What」は、マイルス・デイヴィスが作曲し、1959年の名盤『Kind of Blue』で初めて発表されたインストゥルメンタル曲。アルバムのオープナーとして収録され、演奏メンバーはマイルス・デイヴィス(トランペット)、ジョン・コルトレーン(テナー)、キャノンボール・アダレイ(アルト)、ビル・エヴァンス(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ジミー・コブ(ドラムス)。歌詞は存在せず、ジャズ・スタンダードとしてセッションの定番となっている。
音楽的特徴と演奏スタイル
本作はモード・ジャズの象徴的作品で、Dドリアンを基調にB部で半音上のE♭ドリアンへ移行する構成。形式は32小節のAABA。テーマはベースの二音リフにホーンが和音で応答するコール&レスポンスで、いわゆる“So What”リフが鮮烈な印象を残す。ピアノは四度堆積の和声(通称“So Whatヴォイシング”)を多用し、機能和声に縛られない開放的なサウンド・フィールドを作る。ソロはスケール志向で、限られたハーモニー上での音色・リズム・フレージングの創意が試される。スタジオ版はミディアム・テンポのスウィングだが、後年のライヴではテンポを大幅に上げ、緊張感の高いインタープレイを聴かせる例も多い。
歴史的背景
1950年代後半、ハード・バップのコード進行の複雑化に対し、デイヴィスはモードの可能性に注目。『Milestones』(1958)での試行を経て、『Kind of Blue』で理念を結晶させた。和声進行を最小限に抑え、旋律とサウンドの広がりでドラマを作るアプローチは、即興の自由度を拡張し、以後のジャズ史に大きな転換点をもたらした。「So What」はその方向性を端的に示す代表作である。
有名な演奏・録音
基準となるのは1959年『Kind of Blue』の初演テイク。続いて、1961年の『Miles Davis at Carnegie Hall』、極めて速いテンポでの白熱演奏が聴ける1964年『Four & More』、さらには1965年シカゴのプラグド・ニッケル公演など、デイヴィス自身の各時期のライヴが聴取の要。以後、数多くのジャズ・ミュージシャンがレパートリーに取り入れ、コンボ編成からビッグバンドまで多様な編曲で録音・演奏されている。
現代における評価と影響
「So What」はモード・ジャズの入門曲にして教材としても重宝され、アドリブ学習ではドリアン・モードの運用、モチーフ・デベロップメント、ダイナミクス設計の好例とされる。ピアノの“四度ヴォイシング”はジャズ・ハーモニーの基礎知識として定着。ジャム・セッションでの共通言語となり、録音から半世紀以上を経た今も、演奏家の創造性を映す鏡として生き続けている。
まとめ
簡潔な素材から豊かな即興世界を引き出す「So What」は、モード・ジャズの理念を体現した歴史的名曲である。初演版とライヴの対比を聴くことで、楽曲の柔軟性とデイヴィス流の変容美が一層鮮明になる。映画等での使用は情報不明だが、音楽史上の存在感は不動である。