I'VE GROWN ACCUSTOMED TO YOUR FACE
- 作曲: HAWKINS COLEMAN RANDOLPH

I'VE GROWN ACCUSTOMED TO YOUR FACE - 楽譜サンプル
I'VE GROWN ACCUSTOMED TO YOUR FACE|楽曲の特徴と歴史
基本情報
本作はブロードウェイ・ミュージカル『マイ・フェア・レディ』で発表されたバラードで、英語圏では本来 “I've Grown Accustomed to Her Face” として知られる。一般的なクレジットは作曲フレデリック・ロウ、作詞アラン・ジェイ・ラーナーだが、ここで与えられた作曲者名(HAWKINS COLEMAN RANDOLPH)は出典不明として扱う。1956年初演、1964年の映画版でも教授ヒギンズの重要曲として用いられ、日本では「君の顔に慣れた」などの題で言及されることがある。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかなテンポの抒情的バラードで、語るような旋律線と滑らかな和声進行が核。副次ドミナントや近親調を行き来する変化が、主人公の心情の揺れを支える。ジャズではレガート重視の歌唱や、ルバートのイントロからテンポ・インへ移る構成が定番。器楽演奏ではテナーサックスやトランペットが歌心を前面に押し出し、ビブラートやダイナミクスで陰影を付ける解釈が多い。
歴史的背景
物語終盤、ヒギンズ教授がイライザへの感情に気づく独白として位置づけられ、台詞的なリズムと旋律が緊密に結び付く。ブロードウェイ初演とオリジナル・キャスト盤の成功を機に、アメリカン・ソングブックへ定着。映画版『マイ・フェア・レディ』(1964年)でも印象深い場面を構成し、舞台からスクリーンへと楽曲の知名度を拡大させた。
有名な演奏・録音
基準となる音源は、ブロードウェイ初演キャストの録音および映画サウンドトラック。以降、数多のジャズ歌手・器楽奏者が取り上げ、バラード表現の指標として録音を重ねてきた。ただし個別の決定的名演の特定や網羅は情報不明。共通して、テンポ設定・間合い・ブレス配分が解釈の肝となり、同一曲でも印象が大きく変わる。
現代における評価と影響
ミュージカル発ながら、スタンダードとしてボーカル/インスト双方で定番化。音楽教育の現場では、レガートのコントロールや和声理解、歌詞の情感を音価に翻訳する練習曲として重宝される。舞台の再演や映画の再評価のたびに注目が戻り、配信時代でもスタンダード・プレイリストの常連として聴かれ続けている。
まとめ
『I'VE GROWN ACCUSTOMED TO YOUR FACE』は、舞台文脈のドラマ性とジャズ解釈の自由度を兼ね備えた名バラード。語り口の旋律と円熟した和声が、歌でも器楽でも深い表現を可能にする。クレジット表記には揺れが見られるため出典確認は要注意だが、作品自体の価値は揺らがず、今なお演奏家と聴き手を魅了し続けている。