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Basin Street Blues

  • 作曲: WILLIAMS SPENCER
#スタンダードジャズ
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Basin Street Blues - 楽譜サンプル

Basin Street Blues|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Basin Street Bluesは、作曲家Spencer Williamsによって1928年に発表されたジャズ・スタンダード。ニューオーリンズの通り名“Basin Street”を題材に、街の雰囲気と郷愁を描いた歌詞を持つ楽曲として知られます。初期から歌唱と器楽の両面で広く親しまれ、スウィング以降のジャズ史において定番レパートリーの地位を確立。作詞者はSpencer Williamsとされる一方、初演・初出版の詳細なクレジットや初出媒体の完全な特定は情報不明。代表的な解釈は数多く、世代や編成を超えて演奏され続けています。

音楽的特徴と演奏スタイル

ブルースの語法を基調にしつつも、メロディは朗々とした歌心を持ち、ヴォーカルとホーンの両方に適した旋律線が特徴です。テンポはミディアムのスウィングで取り上げられることが多く、コール&レスポンス的なフレーズ配置がアドリブ展開を促します。歌詞の情景描写に合わせ、トランペットのミュート奏法やトロンボーンの滑らかなグリッサンドなど、ニューオーリンズ由来の表情付けが効果的。シンプルな和声進行は、初心者にも取り組みやすい一方、ベテランはブルーノートや装飾音で個性を発揮できます。ヴォーカル版では語り口調の間合いが肝要で、器楽版ではテーマの歌わせ方とアドリブの対比が聴きどころになります。

歴史的背景

曲名のBasin Streetは、ニューオーリンズの中心部に位置し、かつて歓楽街ストーリーヴィル(Storyville)への玄関口として知られた通り。ストーリーヴィルは1917年に閉鎖されましたが、ジャズ誕生の土壌となった地域への郷愁は、その後も多くの楽曲や物語に刻まれました。1928年にSpencer Williamsが本作を発表した背景には、失われた街の面影と音楽文化への敬意があるとされます。やがてルイ・アームストロングをはじめとする演奏家が取り上げ、ニューオーリンズの象徴を歌い継ぐスタンダードとして世界に広まりました。

有名な演奏・録音

本曲を広く知らしめたのは、1928年のルイ・アームストロングの録音で、彼は後年も再解釈を重ねて決定版的な存在となりました。さらに、ジャック・ティーガーデンはトロンボーンとヴォーカルの両面で名唱・名演を残し、楽曲の哀愁と粋を体現。以降、大小さまざまな編成のジャズ・バンドやシンガーがレパートリーに取り入れ、スウィング、ディキシー、モダンの各文脈で多彩な録音が生まれています。網羅的なディスコグラフィーは情報不明ですが、これらの名演が標準解釈の礎を築いたことは疑いありません。

現代における評価と影響

Basin Street Bluesは、ジャム・セッションやジャズ教育の場でも頻出の教材曲です。メロディが覚えやすく、和声も扱いやすい一方、解釈の幅が広く、歌・ホーン・リズムセクションそれぞれが表現を磨ける題材として評価されています。ニューオーリンズ音楽のエッセンスを学ぶ入口としても有効で、観光や文化イベントの文脈でもしばしば取り上げられます。録音技術や編曲の進化に伴い、テンポ設定やイントロ/エンディングの工夫、二重唱やコール&レスポンスの拡張など、現代的な解釈も生まれ続けています。

まとめ

Spencer Williams作のBasin Street Bluesは、ニューオーリンズの記憶を歌い継ぐジャズ・スタンダード。歌物・器楽の双方で映える旋律と、解釈の余地を残す和声が、時代や世代を超えて演奏者と聴き手を惹きつけてきました。名録音を手掛かりに、自身のテンポ感やフレージングで再発見できる懐の深さこそ、本曲最大の魅力です。