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Walk, Don't Run

  • 作曲: SMITH JOHN H JR
#洋楽ポップス
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Walk, Don't Run - 楽譜サンプル

Walk, Don't Run|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Walk, Don't Runは、ジャズ・ギタリストのJohnny H. Smith Jr.(ジョニー・スミス)が1954年に作曲したインストゥルメンタル。歌詞は存在せず、タイトルのとおり端的で印象的なフレーズとテンポ感が魅力だ。のちにChet Atkins(1957年)の洗練されたフィンガースタイル版を経て、The Ventures(1960年)がエレキ・ギター主導のアンサンブルに再構築し世界的ヒットへと押し上げた。ジャンル上はインストゥルメンタル/サーフ・ロックとして広く認知されている。

音楽的特徴と演奏スタイル

原曲はジャズ由来の和声感と流麗な主題を核に、シンプルながら耳に残るメロディラインを備える。アトキンス版は親指によるオルタネイティング・ベースと内声の独立を活かしたソロ・ギター解釈で、旋律と伴奏の同時進行が巧み。ベンチャーズ版はクリーンなリード・ギターにスプリング・リバーブを効かせ、歯切れのよい8ビートと堅実なベースで推進力を生む。ハーモニーは簡潔だが、ユニゾンとハーモニーの切替、ブレイクの配置、ギター間のコール&レスポンスが明快で、バンド・アレンジの教科書的な完成度を示す。

歴史的背景

1950年代半ば、ジャズ・ギターの土壌で生まれたこの曲は、カントリー/フィンガースタイルの語法を通ってロック文脈に接続された稀有な例である。アトキンスの解釈がギター編曲の雛形を提示し、ベンチャーズがエレキ・ギター編成に最適化して1960年に大きな成功を収めた。インスト曲としては異例のチャート上位に入り、以後のサーフ/インスト・ロック隆盛の象徴的レパートリーとなった。1964年には自己リメイク版“Walk, Don’t Run ’64”も発表され、時代のサウンド変化を反映したバージョン違いが確立している。

有名な演奏・録音

代表例は次のとおり。ジョニー・スミス(1954年):原曲の気品あるジャズ解釈。チェット・アトキンス(1957年):フィンガースタイルの定番アレンジ。ザ・ベンチャーズ(1960年/1964年):世界的普及に決定打を与えたエレキ・ギター版。以降、多数のギタリストやアマチュア・バンドが取り上げ、学校やコミュニティのアンサンブル教材としても定着した。その他の網羅的カバー一覧は情報不明。

現代における評価と影響

Walk, Don't Runはエレキ・ギターの音色設計(クリーン+スプリング・リバーブ)と、2本以上のギターで旋律と下支えを分担する編曲術を広く浸透させた。初級〜中級奏者が合奏で学ぶ題材として最適で、メロディの歌わせ方、休符の扱い、ドラムとベースの役割理解にまで学習効果が及ぶ。映画やテレビでの個別使用例は情報不明だが、BGM、デモ演奏、イベント音楽など実用シーンでの需要は現在も高く、世代を超えて演奏され続けるスタンダード的存在である。

まとめ

ジャズ発の美しい主題を、フィンガースタイルとエレキ・バンドが異なる角度から磨き上げたことで普遍性を獲得した名インスト曲。原曲、アトキンス版、ベンチャーズ版を聴き比べれば、編曲とサウンド・デザインが楽曲の訴求力をいかに拡張するかを明瞭に体感できる。