EI Condor Pasa (コンドルは飛んで行く)
- 作曲: ROBLES DANIEL ALOMIA

EI Condor Pasa (コンドルは飛んで行く) - 楽譜サンプル
EI Condor Pasa (コンドルは飛んで行く)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『EI Condor Pasa(コンドルは飛んで行く)』は、ペルーの作曲家ダニエル・アロミア・ロブレスが1913年の舞台作品(サルスエラ)に用いた楽曲に由来する。現在はアンデスの民俗音楽として世界的に知られ、とりわけ器楽曲として演奏される機会が多い。原曲は旋律と和声が明確で、ギター、チャランゴ、ケーナやサンポーニャなどの伝統楽器編成が定番。題名の“コンドル”はアンデスの象徴的な鳥で、雄大な自然風景を想起させる表題をもつ。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律は哀愁を帯びた短調系と五音音階を基調にし、素朴ながら高揚感のあるフレーズが特徴。パンパイプ(サンポーニャ)や縦笛(ケーナ)の澄んだ音色が主旋律を担い、ギター/チャランゴが分散和音やオスティナートで支える。テンポや調性は編曲により多様で、ゆったりとした抒情的バージョンから、躍動的な舞曲風まで幅広い。合奏、独奏、オーケストラ編成など、編成の自由度が高く、各地の奏者の語法が色濃く反映される。
歴史的背景
20世紀初頭のペルーでは、先住文化の価値を再評価する潮流が高まり、ロブレスはアンデスの旋法や民謡素材を舞台音楽に昇華した。本曲もその文脈で生まれ、やがて舞台を離れて独立曲として広まった。アンデスの象徴であるコンドルは自由や大地の記憶と結びつけられ、地域アイデンティティを表す音楽として受容が進む。戦後は民俗合奏団の国際公演や録音の普及により、南米外でも定番レパートリーとなった。
有名な演奏・録音
1960年代には、フランスを拠点としたロス・インカスが印象的な編曲で欧州に紹介。1970年にはサイモン&ガーファンクルが英語詞版「El Condor Pasa (If I Could)」を発表し、世界的知名度を決定づけた。その後、数多くのフォルクローレ・グループ、ギタリスト、交響楽団が録音し、映画やテレビでも器楽曲として頻繁に用いられている。歌詞の全文は各版で異なるため、ここでは割愛する。
現代における評価と影響
今日、本曲はアンデス音楽を象徴する“入門曲”として教育現場やストリート・パフォーマンスでも親しまれる。一方で、編曲の多様化により著作権表示や出典が版ごとに異なるケースがあり、楽譜や録音を選ぶ際は出典の確認が推奨される。伝統楽器の普及、観光・文化イベントでの活用、ポップスやクラシック領域への越境など、音楽的影響は世代を超えて拡大している。
まとめ
『コンドルは飛んで行く』は、ロブレスの舞台音楽に根ざしながら、地域と時代を超えて再創造され続ける器楽名曲である。アンデス特有の旋律美と素朴な伴奏、自由な編曲文化が相まって、世界の標準レパートリーとして確固たる地位を築いた。