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Blue And Sentimental
- 作曲: BASIE COUNT, DAVID MACK, LIVINGSTON JERRY

Blue And Sentimental - 楽譜サンプル
Blue And Sentimental|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Blue And Sentimental は、カウント・ベイシー、ジェリー・リヴィングストン、作詞マック・デイヴィッドによる1938年の作品。初演として広く知られるのは、カウント・ベイシー楽団のDecca録音で、テナー・サックスのハーシャル・エヴァンスが情感豊かに主旋律を歌い上げたテイクである。タイトルの通り“ブルー”な情緒とセンチメンタルなムードが核にあり、歌詞付き・インストゥルメンタルの両面で愛奏され、今日ではジャズ・スタンダードとして定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
遅めのスウィング・バラードで、シンプルながらブルース・フィーリングを湛えた旋律が魅力。ベイシー楽団の演奏では、控えめなピアノ・コンピングとホーンの柔らかなハーモニーが、テナーのロングトーンとヴィブラートを引き立てる。インプロヴィゼーションは歌心重視で、音数を絞ったフレージング、裏拍の揺れ、ブルーノートの扱いが鍵。コンボ編成ではテナーやギターが主旋律を担うことが多く、イントロでルバート、テーマ後にソロ、フェルマータ気味のエンディングといった構成が好まれる。
歴史的背景
1938年はスウィング黄金期で、カウント・ベイシー楽団はダンスホールを席巻。カンザス・シティ由来のリフとブルース感覚を洗練したサウンドへ昇華し、本曲はそうした美学がバラードに結晶した例といえる。作詞を担ったマック・デイヴィッドによってヴォーカル曲としても親しまれ、楽曲はビッグバンドのみならず小編成にも広がった。録音技術の進歩により、テナーの息遣いやダイナミクスが繊細に捉えられ、バラード表現の手本として認知が高まった。
有名な演奏・録音
・Count Basie and His Orchestra(1938, Decca):ハーシャル・エヴァンスの名演で定評。端整なテーマ提示と温かなサックス・トーンが楽曲の決定版的イメージを形作った。・Ike Quebec「Blue & Sentimental」(1961, Blue Note):タイトル曲として取り上げ、豊潤なテナー・サウンドで再評価を促した。コンボならではの親密な空気感が曲の魅力を引き出している。これらに加え、多くのヴォーカリストや小編成コンボがレパートリーに加え、世代を超えて録音が重ねられている。
現代における評価と影響
本曲はテナー・サックスの歌心と音色美を学ぶ好教材として、教育現場やジャム・セッションでも評価が高い。コード進行は過度に複雑ではなく、旋律線の抑揚とタイム・フィールが表現の肝となるため、奏者の成熟度が反映されやすい。配信時代でもプレイリストに入りやすい落ち着いたムードを持ち、ビッグバンドからデュオまで編成を問わず機能する汎用性が、継続的な演奏機会を支えている。
まとめ
Blue And Sentimental は、スウィング期の美学を体現したバラード・スタンダード。ベイシー楽団の決定的録音と、その後のコンボ名演が蓄積したことで、時代や編成を超えて息長く愛されている。端正なメロディと深い情緒は、リスナーには癒やしを、奏者には表現の奥行きを与える一曲である。