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Born To Be Blue
- 作曲: TORME MEL,WELLS ROBERT

Born To Be Blue - 楽譜サンプル
Born To Be Blue|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Born To Be Blue」は、メル・トーメ(作曲)とロバート・ウェルズ(作詞)による1946年の楽曲。内省的なムードのバラードで、のちにジャズ・スタンダードとして広く定着した。原初の初演者や初出媒体は情報不明だが、作曲者自身の歌唱を含む複数の録音により知名度を獲得した。哀感を帯びたタイトルどおり、失意や孤独の情感を繊細に描く歌として愛好される。
音楽的特徴と演奏スタイル
緩やかなテンポで歌詞の叙情を際立たせる演奏が一般的。シンプルなピアノまたはギターの伴奏、ブラシを用いた穏やかなスウィング、控えめなダイナミクスの中でフレーズの間合いを生かすアプローチが好まれる。キーやテンポ設定は編成や歌い手に応じて柔軟に選ばれ、ルバートの導入や間の取り方、語り口の緩急など、表現上の余白が大きいことも本曲の魅力である。
歴史的背景
第二次大戦直後のアメリカで生まれ、ポピュラー歌曲とジャズの接点に位置する作品群の一つ。トーメとウェルズは「The Christmas Song」でも知られる名コンビで、本作もその洗練された旋律と言葉運びで支持を集めた。クラブ文化の発展とレコードの普及がスタンダード化を後押しし、歌もののバラードとしてレパートリーに定着していく。
有名な演奏・録音
メル・トーメの歌唱は基準点として参照されるほか、チェット・ベイカーの繊細な解釈は本曲のイメージを決定づけた名演として広く知られる。ギタリストのグラント・グリーンは同名アルバムで取り上げ、インストゥルメンタルでも定番化した。これらをはじめ、多数の歌手・奏者が録音し、世代やスタイルを超えてカバーが重ねられている。
現代における評価と影響
今日ではボーカル・ジャズの入門かつ奥義を兼ねる一曲として、教育現場やセッションで継続的に演奏される。2015年の映画「ブルーに生まれついて(Born to Be Blue)」の題名・内容と響き合い、曲名とムードがさらに広い層に浸透。配信プラットフォームでも再発見が進み、新録音やライブでの再解釈が活発に行われている。
まとめ
静謐で陰影のあるバラードとして、歌詞と旋律の結びつきが強い本作は、時代を超えて解釈の余地を与え続ける。シンガーの表現力とアンサンブルの呼吸を引き出す名素材であり、名演の蓄積が新たな演奏を誘発することで、ジャズ・スタンダードとしての地位を確かなものにしている。