あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

Butterfly

  • 作曲: HANCOCK HERBIE,MAUPIN BENNIE
#スタンダードジャズ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

Butterfly - 楽譜サンプル

Butterfly|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Butterflyは、ハービー・ハンコックとベニー・モーピンの共作によるインストゥルメンタル。初出は1974年のアルバム『Thrust』(Columbia)で、ヘッドハンターズ期の代表曲です。編成はハンコック(フェンダー・ローズ/ARPシンセ)、モーピン(木管)、ポール・ジャクソン(ベース)、マイク・クラーク(ドラムス)、ビル・サマーズ(パーカッション)。原曲はボーカルなしの作品で、作詞者は情報不明。

音楽的特徴と演奏スタイル

静謐でメロウなジャズ・ファンクの質感が核。しなやかなベース・オスティナートの上に、ローズの温かな和声とアナログ・シンセのパッドが重なり、モーダル志向の主題が浮かび上がります。旋律は簡潔で、サックスやバスクラリネットが空間を描くように歌い、過度な技巧よりも余韻とダイナミクスが重視されます。ビートはタイトながらも呼吸するように揺れ、各楽器の音色バランスが楽曲の情感を彩ります。

歴史的背景

前年の『Head Hunters』がクロスオーバーの金字塔となり、ハンコックはグルーヴと音色設計をさらに洗練させました。『Thrust』ではファンクの推進力に抒情性を併せ、Butterflyはアルバムの抒情的ハイライトとして位置づけられます。エレクトリック楽器と当時先進的だったスタジオワークの積極的活用が、奥行きのあるサウンドスケープを生み、70年代半ばのジャズ・フュージョン像を更新しました。

有名な演奏・録音

スタジオ版に加え、1975年の来日公演を収めたライヴ盤『Flood』では長尺の即興が聴け、緊密なリズムの交錯が際立ちます。1979年の日本制作『Direct Step』では再録され、当時の機材によるサウンドの刷新が図られました。さらに、ハンコックが笠井紀美子と共演したアルバム『Butterfly』(1979)にはボーカル版が収録されていますが、作詞者は情報不明です。これらの録音は楽曲の多面的な魅力を示す重要資料です。

現代における評価と影響

Butterflyは、ジャズ・フュージョンの教科書的楽曲として、アンサンブルのダイナミクス設計やモーダル即興の練習曲に選ばれます。メロウで洗練されたグルーヴは現代のプレイリストでも定番化し、クラブからジャズ・クラブ、コンサートホールまで場面を選ばずに機能。鍵盤奏者のサウンド・デザイン研究や、木管の歌心を学ぶ教材としても重宝され、再演機会が絶えません。

まとめ

抒情性とグルーヴ、電子音色の融合を高次で達成したButterflyは、時代を超えて聴き継がれる名曲です。初めて触れるなら、原点となる『Thrust』と、即興の熱量を捉えた『Flood』の聴き比べがおすすめ。録音ごとの音色設計やテンション処理の違いから多くを学べ、リスナーにも演奏者にも大きな示唆を与えてくれます。