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By Myself
- 作曲: SCHWARTZ ARTHUR

By Myself - 楽譜サンプル
By Myself|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「By Myself」はアーサー・シュワルツ作曲、ハワード・ディーツ作詞による1937年の楽曲。ブロードウェイ・ミュージカル「Between the Devil」のために書かれ、その後1953年のMGM映画「The Band Wagon(邦題:バンド・ワゴン)」でフレッド・アステアが歌唱し広く知られるようになった。現在ではジャズ/ポピュラー領域で歌い継がれるスタンダードの一つとして定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
内省的なテキストが、孤独と自己決意を静かに見つめるバラード。ボーカル曲としての比重が高く、イントロでのルバートや語り口のニュアンスづけが肝要とされる。小編成ジャズ・コンボ、ピアノと歌のデュオ、ストリングスを伴うオーケストラなど、編成は幅広い。テンポは中庸からスローが主で、ブラシを用いた柔らかなスウィング感や、ハーモニーの陰影を活かす落ち着いた伴奏が選ばれやすい。歌い手は行間の感情の移ろいを緻密なフレージングで描き、終盤にかけて静かな高揚を築く解釈がよく見られる。
歴史的背景
ディーツ&シュワルツは、洗練された都会派センスで知られる作詞作曲コンビ。「By Myself」は1937年の舞台「Between the Devil」で初披露され、その後、既存曲を再構成した映画「バンド・ワゴン」に組み込まれたことでふたたび脚光を浴びた。戦間期から戦後アメリカにかけて花開いたブロードウェイ/映画音楽の黄金期を象徴する一篇であり、物語性と独立した楽曲性の両立が、後のジャズ・スタンダード化を後押ししたといえる。
有名な演奏・録音
確実な代表例として、フレッド・アステアが映画「バンド・ワゴン」(1953年)で披露した歌唱とサウンドトラック音源が挙げられる。これにより楽曲は広く一般に浸透し、その後は多くのジャズ・ボーカリストやポピュラー歌手のアルバム、クラブやコンサートのレパートリーとして定着した。具体的な著名録音の網羅的な一覧は情報不明だが、映画版の存在が後続の解釈と録音の増加に決定的な影響を与えたことは間違いない。
現代における評価と影響
Great American Songbookの一曲として評価され、成熟した表現力やフレージングを学ぶ教材的レパートリーとしてもしばしば選ばれる。自己を鼓舞する主題は時代や世代を越えて共感を呼び、ブロードウェイ発の洗練と映画的ドラマ性を兼ね備えた曲想は、ステージ、レコーディング、オーディションなど多様な場面で活用されている。スタンダード集やシンガーの名唱を通じ、現在も歌い継がれる生命力を保つ。
まとめ
「By Myself」は、舞台に端を発し映画で普及し、いまやジャズ・スタンダードとして確固たる地位を得た名曲である。品位あるメロディと自立のメッセージが、シンプルながら深い情感表現を可能にし、歌手・奏者双方の表現力を引き出す。明確な出自と豊かな解釈の余地を併せ持つ、本質的な魅力が長期的な評価を支え続けている。