Take The "A" Train
- 作曲: STRAYHORN BILLY

Take The "A" Train - 楽譜サンプル
「Take The "A" Train|楽曲の特徴と歴史」
基本情報
ビリー・ストレイホーン作曲のジャズ・スタンダード。日本語題は「A列車で行こう」。タイトルはニューヨーク市地下鉄A線を指す。1941年にデューク・エリントン楽団が初録音し、以後は同楽団のテーマ曲として世界的に知られるようになった。スウィング時代を象徴する代表曲で、ビッグバンドとコンボの両方で愛奏されている。
音楽的特徴と演奏スタイル
典型的な32小節AABA形式、アップテンポのスウィング。冒頭の印象的なリフは跳躍と半音下降を巧みに織り交ぜ、II–V–Iを軸にした明快な和声進行が続く。ビッグバンドではブラスとサックスのコール&レスポンス、シャウト・コーラス、各セクションのソロ回しが聴きどころ。コンボではテーマのリフを縮約し、ウォーキング・ベースと4バースのドラム交換などで推進力を作る。テンポ設定やキーは編成やアレンジにより異なるが、いずれもスウィングの躍動感を前面に出すのが基本。
歴史的背景
作曲者ストレイホーンは1939年にエリントンに合流し、以後楽団の中核的な作・編曲家として活躍。本曲は1941年の録音を機に看板曲となり、ラジオでも頻繁に流れた。著作権団体の対立によりエリントン側がBMI楽曲のレパートリー拡充を迫られたことも採用の後押しとなり、以後ツアーの開幕を飾る定番曲に定着。ニューヨークの都会的スピード感を象徴する楽曲イメージも、当時の聴衆に強い印象を残した。
有名な演奏・録音
決定的名演は1941年のデューク・エリントン楽団盤で、レイ・ナンスのトランペット・ソロを含むアレンジが以後の雛形となった。ボーカル入りではエラ・フィッツジェラルドのスキャットを交えた録音が知られ、インストではオスカー・ピーターソン・トリオやウィントン・マルサリスらの解釈も広く評価されている。ビッグバンドから小編成まで録音例は膨大で、学校・地域バンドのレパートリーとしても長年親しまれている。
現代における評価と影響
都会的で明快なテーマと扱いやすいコード進行は、即興演奏の入門から上級者の構築的ソロまで幅広く対応。ビッグバンド教材やジャム・セッションのコール曲として定着し、音楽教育の現場でも頻出する。映画・テレビ・CMなど映像媒体での使用例も多いが、具体的な作品名は情報不明。今日も“エリントン・サウンド”の象徴として、多様なアレンジで演奏され続けている。
まとめ
本曲は、ストレイホーンの洗練された作曲術とエリントン楽団の機動力が結晶したジャズの象徴的レパートリー。耳に残るリフ、堅固な形式、即興を生かす進行が、時代と編成を超えて奏者と聴衆を結び続けている。