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Chasin' The Trane
- 作曲: COLTRANE JOHN

Chasin' The Trane - 楽譜サンプル
Chasin' The Trane|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Chasin' The Trane」はジョン・コルトレーン作。1961年ニューヨーク、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音として知られ、翌年インパルス!から発表。ピアノを欠いたテナー、ベース、ドラムのトリオで、約16分の長尺即興が展開される。ブルースを基調にしたオリジナルで、曲名は愛称“Trane”を追うという言葉遊び。歌詞はなく器楽曲。
音楽的特徴と演奏スタイル
コルトレーンは小さな動機を執拗に変奏し、反復と加速、音域拡張やオーバーブローまで統合して音の奔流を組み立てる。エルヴィン・ジョーンズのポリリズムと、ベースのウォーキングが強靭な地盤を形成。和声はブルースの枠を保ちつつ、ピアノレスにより調性感が解き放たれ、モーダルからフリーへ滑らかに接続する。
歴史的背景
1961年のヴァンガード連続公演は、アンサンブルの可能性を実験的に広げた時期。本曲はその只中で生まれ、主流的バップ語法を超える急進性ゆえに賛否を呼んだ。エリック・ドルフィー参加の前衛志向や、ピアノを外す選択は、表現がモードからフリーへ向かう転換点を象徴する。
有名な演奏・録音
初出は『Live at the Village Vanguard』。現場の熱気と観客の反応を刻む決定的ドキュメントとして評価が高い。後年のボックス『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』でも聴ける。他者によるカバーは少なく、コルトレーンのシグネチャーとされる。
現代における評価と影響
本曲はポスト・バップ以降のサックス奏法、とりわけ動機開発と長尺フォーム運用、リズム隊の相互作用の指標として参照される。テナーの表現域拡大やポリリズム運用、ピアノレス・トリオの自由度に影響を与え、研究・教育の場でしばしば取り上げられる。
まとめ
ブルースの枠組みを土台に、形式の縁まで推し進めた即興実験がライヴ空間で結実した一曲。スタンダードのように広く演奏されるわけではないが、表現領域を拡張した歴史的名演として今なお聴かれている。