あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

Por Causa De Você

  • 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS
#ボサノバ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

Por Causa De Você - 楽譜サンプル

Por Causa De Você|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Por Causa De Vocêは、作曲アントニオ・カルロス・ジョビン、作詞ドロレス・ドゥランによる1957年の楽曲。英語詞はRay Gilbertが手がけ、「Don't Ever Go Away (Por Causa de Você)」としても知られる。ジャンルはボサノヴァ/サンバ・カンソン系のバラードで、甘美で憂いを帯びた旋律が特徴。初演・初録音の詳細は情報不明だが、1950年代後半のリオで生まれ、以後多くの歌手・奏者に取り上げられるスタンダードとなった。

音楽的特徴と演奏スタイル

中低音域を中心とした流麗なメロディに、ジョビンらしい拡張和音(9th, 11th, 13th)や半音進行が絡み、切ない情感を醸す。テンポはスローからミディアム・スローで、演奏現場では前奏やAセクションをラブリーなルバートで導入し、以降を静かなボサ・フィールで刻むアプローチが定番。ギター主体の編成ではナイロン弦の柔らかいアルペジオと控えめなパーカッション、ピアノ編成では内声のクロマティックなボイスリーディングを活かす解釈が好まれる。ヴォーカルは息の多い発声とレガートで語るように歌い、歌詞の未練と願いを丁寧に描く。

歴史的背景

発表は1957年。サンバ・カンソンからボサノヴァへと移行する過渡期に位置づけられ、洗練された和声言語と都会的な感性が同曲にも色濃く現れる。ジョビンとドロレス・ドゥランの協働はブラジル大衆音楽の重要な一頁であり、同曲はその代表例の一つ。ドゥランは1959年に早逝したが、彼女の言葉が与えた親密さと切実さは、以後の歌い手たちの表現の手本となった。1960年代以降は英語詞版の普及も進み、国際的なレパートリーへと拡大していく。

有名な演奏・録音

英語題「Don't Ever Go Away (Por Causa de Você)」としての代表例に、フランク・シナトラがアントニオ・カルロス・ジョビンと取り組んだ録音(アルバム『Sinatra & Company』収録)がある。これはEumir Deodatoのアレンジで、低徊するバラード感と端正なボサの律動が共存する名演として知られる。ポルトガル語版も多数のブラジル人歌手に歌われ続け、ジャズ・ヴォーカル/ボサノヴァ双方のステージで定番化している。その他の初出や特定の映画使用は情報不明。

現代における評価と影響

同曲はブラジリアン・スタンダードとして、ジャズ・クラブから音楽大学のアンサンブルまで幅広く取り上げられる。転調感や半音的進行を含むハーモニーは、アドリブ練習やヴォイシング研究の教材としても有用で、歌詞表現の細やかさはヴォーカリストの解釈力を試す。原語と英語の両バージョンが共存するため、国際的なレパートリーとしての汎用性も高い。配信時代においても新録が途切れず、再評価の波が継続している。

まとめ

Por Causa De Vocêは、ジョビンの和声的洗練とドゥランの親密な言葉が結晶した哀愁のバラード。ボサノヴァとジャズ双方の文脈で生き続け、時代や言語を越えて歌い継がれる。初出の詳細が情報不明な点を差し引いても、名演が示す普遍性は揺るがない。