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Crepuscule With Nellie
- 作曲: MONK THELONIOUS S

Crepuscule With Nellie - 楽譜サンプル
Crepuscule With Nellie|楽曲の特徴と歴史
基本情報
1957年にセロニアス・モンクが作曲した器楽曲。タイトルは「ネリーとともに迎える薄明」を意味し、モンクの妻ネリーにちなむ献呈曲として知られる。歌詞はなく、メロディと和声の精妙さが中核。初出はRiverside期の録音で、以後ジャズ・スタンダードとして定着した。
音楽的特徴と演奏スタイル
最大の特色は「ほぼスルーコンポーズ」である点。モンクはアドリブ・ソロを抑え、指定した和声配置やアクセントを厳密に守る演奏を求めた。クロマティックな内声進行、全音音階由来の浮遊感、短いモチーフの反復と沈黙の使い方が相互作用し、ゆったりしたテンポでも緊張感を保つ。ピアノは和声塊で主旋律を奏で、アンサンブルではユニゾンと対位が交錯する。
歴史的背景
本作はRiverside在籍期の創作の成熟を示す一篇で、同年のセッションを通じて完成度が高められた。モンクの作曲家としての側面を強く印象づけ、バップ以降の語法に独自の形式感を持ち込んだ例としてしばしば言及される。妻ネリーへの献呈曲として知られ、私的な想いが反映した標題も注目点である。
有名な演奏・録音
初出として広く知られるのがRiverside盤「Monk’s Music」(1957)。管入り編成が旋律の重さと陰影を強調する。さらに「The Thelonious Monk Orchestra at Town Hall」(1959)ではホール・オーヴァートンの編曲によりオーケストラルな音響が付与され、曲の構造美が際立つ。モンク自身の各種ライヴ録音でも繰り返し取り上げられている。
現代における評価と影響
アドリブ中心というジャズの通念を相対化する教材的価値を持ち、音大・教育現場でもしばしば分析対象となる。モンク語法の要である非機能的和声、タイと休符の間合い、ダイナミクスのコントロールを学ぶ格好のレパートリーであり、ピアノ独奏からコンボまで編成を問わず演奏され続けている。
まとめ
Crepuscule With Nellieは、詩情と構築性を併せ持つモンクの代表作。即興より作曲性を前面に出し、短いフレーズと和声の選択だけで深い情感を描く。その独創性は今日も色褪せず、モンク作品群の中で特異かつ必修の一曲として位置づけられている。