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Crisis
- 作曲: HUBBARD FREDDIE

Crisis - 楽譜サンプル
Crisis|楽曲の特徴と歴史
基本情報
“Crisis”は、トランペッター/作曲家フレディ・ハバードが1961年に書いたハード・バップ曲。Blue Note期の代表作で、Art Blakey & The Jazz Messengers「Mosaic」(1961)や、ハバード自身の「Ready for Freddie」(同年)で広く知られる。いずれもジャズ史の重要盤として評価が高い。インストゥルメンタル作品であり、歌詞は存在しない。
音楽的特徴と演奏スタイル
リフを核にした緊張感の高いテーマ、力強いホーン・ユニゾン、推進力のあるスウィングが特徴。メッセンジャーズ盤では3管編成が厚みを生み、鋭いアンサンブルのキメとドラムの爆発的エネルギーがソロを一段と押し上げる。ハーモニーはブルース語法とモーダルな発想を行き来し、アドリブに広い余白を与える構え。結果として、各プレイヤーの語彙とダイナミクスが前面化し、ライブ感に満ちた硬派なサウンドが形成される。
歴史的背景
1961年はハード・バップ成熟期で、Blue Noteが数多の傑作を送り出した時代。ハバードは同年メッセンジャーズに加入(リー・モーガンの後任)し、バンドの攻勢的サウンドに呼応して本曲を提供した。都市の緊迫感を思わせるタイトルと音像は、クラブ・シーンで鍛えられた当時のジャズの熱量を鮮やかに映している。ハバードの作曲家としての台頭と、グループ・サウンドの発展が交差した点でも重要な位置づけにある。
有名な演奏・録音
代表的録音はArt Blakey & The Jazz Messengers「Mosaic」(Art Blakey, Freddie Hubbard, Wayne Shorter, Curtis Fuller, Cedar Walton, Jymie Merritt)。タイトなアンサンブルと爆発力が圧巻で、ハード・バップ期の金字塔に数えられる。またFreddie Hubbard「Ready for Freddie」ではWayne Shorter, Bernard McKinney(euph), McCoy Tyner, Art Davis, Elvin Jonesが参加し、編成の違いからテーマの厚みやソロの質感に別種の緊張と色彩をもたらす。
現代における評価と影響
“Crisis”は、ハード・バップのエナジーと構築性を併せ持つ楽曲として今日も参照される。再発やストリーミングでアクセスが容易になり、ライブや録音で取り上げるアーティストも少なくない。ブラスのユニゾン主体のテーマ、鋭いキメ、熱量高いインタープレイは、ハバードの書法と当時のバンド・アンサンブルの美点を学ぶ手掛かりとなっている。
まとめ
刺すようなテーマと熱量ある即興で、黄金期ジャズのダイナミズムを体現する“Crisis”。Art Blakey「Mosaic」とFreddie Hubbard「Ready for Freddie」という二つの名演を聴き比べれば、編成差による表情の変化も楽しめる。ハバードの初期代表作として必聴の一曲だ。