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Wave (Vou te contar)
- 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS

Wave (Vou te contar) - 楽譜サンプル
Wave (Vou te contar)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
1967年、アントニオ・カルロス・ジョビンが作曲・作詞したボサノヴァ曲。原題は「Wave(英語)」/「Vou te contar(ポルトガル語)」で、同年のアルバム『Wave』(A&M、プロデュース:クリード・テイラー、編曲:クラウス・オガーマン)で発表された。インストゥルメンタルとしても、英語詞・ポルトガル語詞のボーカル曲としても広く演奏され、ジャズ・スタンダードとして定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
中庸で穏やかなボサノヴァのグルーヴに、伸びやかで官能的な旋律が乗るのが特色。原曲ではストリングスを配したオーケストレーションが透明感を引き立て、ギター(ナイロン弦)やピアノがシンコペーションを控えめに刻む。和声はジョビンらしく洗練され、柔らかな転調感と長いフレーズが歌心を生む。ライブではミディアム・スローのテンポ設定が一般的で、ボーカルはレガート、インストはサックスやフリューゲルホーン、ギターの滑らかな音色が好相性。エンディングはフェイドアウトまたはリタルダンドがよく用いられる。
歴史的背景
1960年代後半、ボサノヴァはブラジルから国際的な音楽へと拡張し、ニューヨークやロサンゼルスのスタジオでジャズと緊密に交差した。「Wave」はその成熟期を象徴する一曲で、ジョビンの作家性(簡潔な旋律と高度な和声、都会的なサウンドプロダクション)が結晶した。器楽と歌の両面で受容されたことが、言語や国境を越えた普遍性を強めた。
有名な演奏・録音
決定的な参照源は、ジョビン自身のアルバム『Wave』(1967)。オガーマンのアレンジによる瑞々しいストリングスと、抑制の効いたリズム・セクションが作品の理想形を示した。その後も多くのジャズ・ミュージシャンやボサノヴァ歌手がレパートリーに取り入れており、ボーカル版・インスト版ともに録音は非常に多い。個別の代表的録音の網羅は情報不明だが、ジャム・セッションやリサイタルでの定番曲として広く認知されている。
現代における評価と影響
「Wave」は教育現場でも取り上げられるスタンダードで、リズムのニュアンスやハーモニー運用を学ぶ教材として有用とされる。プレイリストや配信サービスでも定常的に聴取され、カフェ系BGMからジャズ・クラブまで現役感のある人気を維持。楽譜は各種リアルブックやオフィシャル・スコアに掲載され、カバーの裾野の広さが長寿命を支えている。
まとめ
端正なボサノヴァのリズム、麗しいメロディ、洗練のオーケストレーション—「Wave」はジョビンの美学を体現し、半世紀以上にわたり世界中で愛奏されてきた。歌でも器楽でも魅力が損なわれない汎用性が、時代を超えるスタンダード性の鍵である。