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Trocando Em Miúdos

  • 作曲: HIME FRANCIS
#ボサノバ
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Trocando Em Miúdos - 楽譜サンプル

Trocando Em Miúdos|歌詞の意味と歴史

基本情報

『Trocando Em Miúdos』は、作曲家フランシス・ハイメ(Francis Hime)によるMPB楽曲。作詞はシコ・ブアルキ(Chico Buarque)。初出年は1978年とされ、ポルトガル語の題名は「平たく言えば/端的に言うと」の意。ボーカル曲で、ピアノを核にした洗練された和声と流麗なメロディが特徴。代表的録音はシコ・ブアルキによるスタジオ版で、以降多くの歌手がレパートリーに取り入れている。詳細なレーベル情報は情報不明。

歌詞のテーマと意味

歌詞は、破局後の「清算」を冷静かつ皮肉に言葉で積み上げる手法が核。愛情の残滓と自尊心、権利と感情のせめぎ合いを、日常語と法・経済の語彙を交錯させて描く。題名が示すとおり「噛み砕いて言えば」という口語感が生々しく、所有物の分配や約束の取り消しを列挙しながら、語り手の未練や痛みが行間から滲む。甘美な旋律と辛辣な言葉の対比が、成熟した大人の恋の終わりを普遍的な物語へと昇華している。

歴史的背景

発表当時のブラジルは軍政下の後期で、文化表現には検閲が残っていた。MPBの作家たちは暗喩や二重の意味を駆使して個と社会の感情を伝え、本作も私的な別れの情景に普遍的な緊張感を宿す。フランシス・ハイメのクラシックやジャズに通じた和声感と、ブアルキの精緻な言語感覚が結び付き、70年代末のMPBが持つ知的で都会的な美学を体現した一曲となった。

有名な演奏・映画での使用

最も広く知られるのはシコ・ブアルキ自身の録音。作曲者フランシス・ハイメによるコンサート版や、複数のMPB歌手によるカバーも継続的に発表されている。編成はピアノ中心からフルバンドまで幅広く、解釈の余地が大きいことも人気の理由。映画やテレビでの具体的使用例は情報不明だが、劇場公演やリサイタルで取り上げられる機会は多い。

現代における評価と影響

今日でもポルトガル語話圏を中心に歌い継がれ、別離をめぐる成熟した語りの模範として引用される。歌詞のフレーズは批評やコラムでしばしば参照され、音楽教育の現場でも和声進行やテキスト表現の教材として扱われることがある。配信時代においても再生が広がり、若い世代による新たな解釈・カバーが増えている点も注目である。

まとめ

私的な痛みを克明に「言い換え」ながら普遍の感情へ導く本作は、MPBの成熟を示す代表曲。簡潔な語り口と豊潤な和声、そして余白の大きな構成が、聴き手の経験に寄り添う。初めて触れる人はオリジナル録音から、歌詞のニュアンスを味わいたい人は訳詞と併せて聴くと理解が深まるだろう。