あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

アーティスト情報なし

Dinah

  • 作曲: AKST HARRY
#スタンダードジャズ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

Dinah - 楽譜サンプル

Dinah|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Dinah」は、作曲家ハリー・アクスト(Harry Akst)が1925年に発表した楽曲で、作詞はサム・M・ルイス(Sam M. Lewis)とジョー・ヤング(Joe Young)。後年ジャズ・スタンダードとして定着した。形式は32小節のAABAで、ミディアムからアップのテンポで演奏されることが多い。初演や初出の舞台作品の詳細は情報不明だが、ティン・パン・アレー由来のポピュラー曲として広く流布し、歌ものとしても器楽曲としても親しまれている。

音楽的特徴と演奏スタイル

軽快で覚えやすい主題に、スウィング時代の典型である循環進行(I–VI–II–V)や副属和音が用いられ、アドリブに乗りやすいハーモニーを備える。Aセクションはシンコペーションが印象的で、ブリッジは対照的に滑らかなラインで展開。テンポ設定はダンス寄りのミディアム・スウィングから、ヴィルトゥオーゾ性を強調する高速まで幅広い。ストライド・ピアノ、スモール・コンボ、ビッグバンドのいずれでも映える。

歴史的背景

1920年代半ばのアメリカで出版され、ポピュラー曲として人気を博したのち、ニューオーリンズ〜スウィング系の奏者に急速に取り上げられた。録音技術と放送の発展に伴い、1930年代には米欧のジャム・セッションで定番化。即興の教材としても扱われ、後続世代の語法の共有基盤を形成した。映画や舞台での具体的な使用履歴は情報不明。

有名な演奏・録音

代表的な名演として、ルイ・アームストロング、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリ率いるホット・クラブ、ファッツ・ウォーラーのストライド、ベニー・グッドマンの小編成などが広く知られる。さらに、ビング・クロスビーやミルス・ブラザーズといったポピュラー系の歌唱も普及に寄与した。いずれも旋律の明快さとコード運びの汎用性を活かし、編成や時代を超えて魅力を示している。

現代における評価と影響

今日でも多くのスタンダード集やフェイクブックに収録され、セッションの呼び曲として安定した地位を保つ。シンプルな動機と機能和声により、ビバップ以降の語彙にも容易に接続できる点が教育的に評価される。テンポ可変性とフォームの明瞭さは、ソリストのフレージング研究やリズム・セクションのインタラクション訓練にも有用。著作権や版の扱いは地域・版元により異なるため確認が望ましい。

まとめ

「Dinah」は、歌としての親しみやすさとジャズ的展開力を併せ持つ一曲であり、世代とスタイルを越えて演奏され続けてきた。AABAの端正な設計と汎用的ハーモニーが、名手の個性を際立たせる器となり続けている。入門者のレパートリー拡充にも、熟練者の技巧披露にも適した、普遍性の高いスタンダードである。